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インフレによる見えない増税5.4兆円という不都合な真実:2025年度一般会計税収84兆円の実像

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インフレによる見えない増税5.4兆円という不都合な真実:2025年度一般会計税収84兆円の実像

政府にとってインフレで税収が増えることは良いことであり、国民が貧困化しようが困窮しようが関係のないことだと考えている。

本記事のポイント

1. 2025年度税収は84.2兆円と過去最高だが、定額減税の反動を除くと基調的増収は約6.7兆円である。

2. 基調的増収約6.7兆円のうち約5.4兆円、つまり約8割は物価上昇による「インフレ増収」と試算される。

3. これは政府の財源余裕ではなく、物価高に苦しむ市民に返すべきものである。

 

2025年度の国の一般会計税収が84兆円を超え、6年連続で過去最高を更新する見通しとなった。報道によれば、2025年度税収は84.2兆円程度となり、2024年度の75.2兆円から約9兆円増える。政府が補正予算編成時に見込んでいた税収も大きく上回る見通しである。物価高、賃上げ、企業収益の堅調さが、所得税、法人税、消費税を押し上げたとされる。

このニュースは、一見すると「日本経済が強くなり、税収も増えた」という明るい話に見える。しかし、税収増の中身を丁寧に見ると、そう単純ではない。今回の増収には、実質的な所得や生産の増加によるものだけでなく、物価上昇によって名目上の所得、売上、消費額が膨らみ、その結果として税収が自動的に増えた部分が大きく含まれている。これを本記事では「インフレ増収」と呼ぶ。

結論から言えば、2025年度の基調的な税収増の約8割はインフレ増収である。つまり、税収過去最高という見出しの裏側には、政府が税率を上げなくても、物価高によって税収が増える「見えにくい増税」の構造がある。

まず、表面上の数字を確認しよう。2024年度の一般会計税収は75.2兆円、2025年度の税収見込みは84.2兆円である。単純に差し引けば、増収額は9.0兆円となる。だが、この9.0兆円をそのまま経済の基調的な増収と見ることはできない。2024年度には所得税の定額減税が実施され、国税ベースで2.302兆円の減収要因があったからである。2025年度にはその減税要因が剥落するため、税収は何もしなくても反動的に増える。

そこで、2024年度税収75.2兆円に定額減税による減収分2.302兆円を足し戻すと、減税がなかった場合の基準税収は77.502兆円となる。これを2025年度税収見込み84.2兆円と比べると、定額減税の反動を除いた基調的増収額は6.698兆円である。つまり、政策的に見るべき増収額は、表面上の9.0兆円ではなく、6.7兆円程度である。

この基調的増収のうち、インフレによる増収効果を試算する。2025年度の名目GDP成長率は4.1%、実質GDP成長率は0.8%であるため、GDPデフレーター上昇率は約3.27%となる。名目成長に占める価格要因を分解すると約80.2%であり、基調的増収額6.698兆円のうち、インフレ増収は約5.37兆円と試算される

これは非常に重要な数字である。2025年度の税収増は、たしかに過去最高である。しかし、定額減税の反動を除いて見れば、その増収の約8割は、実質的な経済成長ではなく、物価上昇による名目値の膨張から生じたものなのである。

もちろん、この試算は機械的な簡便なものである。税収はGDPだけで決まるわけではない。所得税は賃金、雇用、税制改正の影響を受ける。法人税は企業収益に左右される。消費税は消費額や輸入、価格動向の影響を受ける。報道では、2025年度の所得税収は25.3兆円、法人税収は21.7兆円、消費税収は26兆円程度とされており、税目ごとに増収要因は異なる。

それでも、物価高が税収を押し上げているという構図は動かない。消費税を考えれば分かりやすい。税率が10%のままでも、1000円の商品が1100円になれば、消費税額は100円から110円に増える。消費者が買う数量が増えたわけではない。生活が豊かになったわけでもない。それでも、政府に入る税収は増える。所得税についても、物価上昇に伴って名目賃金が上がれば、実質的な生活水準が改善していなくても、課税所得は増える。累進税率の下では、名目所得の増加が税負担をさらに押し上げることもある。

したがって、税収過去最高というニュースを、単純に「財政に余裕ができた」と読むべきではない。むしろ、家計が物価高に苦しむ一方で、政府だけが物価高の恩恵を受けている構造こそ問題にすべきである。2025年平均の消費者物価指数は前年比3.2%上昇しており、家計の購買力は強く圧迫されている。

ここで重要なのは、インフレ増収は国民が意識しにくい増税だという点である。通常の増税であれば、政府は税率を引き上げる法案を国会に提出し、国民に説明しなければならない。ところが、インフレ増収では税率は変わらない。制度も大きく変わらない。それでも、物価が上がることで課税ベースが膨らみ、税収は自動的に増える。国民には「増税された」という感覚が薄い一方で、実際には税負担が増している。

さらに、今回のように税収が大きく上振れすれば、政府はそれを新たな歳出の財源として使いたくなる。報道では、2025年度決算で純剰余金が2.6兆円程度になる見通しともされている。 だが、物価高によって生じた税収増を、政府の裁量的支出の原資として当然視するのは筋が違う。インフレ増収は、もともと物価高に耐えた家計や企業から生じたものである。であれば、まず考えるべきは、歳出拡大ではなく、負担を負った国民への還元である。

とりわけ消費税のインフレ増収は、低所得層ほど重くのしかかる。食料品や日用品の価格上昇は、所得の低い世帯ほど生活に直撃する。

このように物価高によって政府の税収が増えたのでああるから、政府は「税収が増えたから何に使うか」ではなく、「物価高で取り過ぎた分をどう戻すか」を議論すべきである。

2025年度税収84兆円超というニュースの本質は、「経済成長で政府の懐が潤った」という話ではない。むしろ、「物価高によって国民の負担が増え、その結果として政府の税収が膨らんだ」という話である

税収が過去最高になったからといって、それは政府が自由に使える財源が増えたことを意味しない。インフレによって生じた増収は、物価高に苦しむ家計や事業者から、制度変更を伴わないまま見えにくい形で税収が吸い上げられているに過ぎないので、政府の取り分ではなく、物価高に耐えてきた市民に返されるべきものである。

表 年収階級別インフレ税負担額((出典)総務省統計局「家計調査」により筆者推計)

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