デジタル教育に移行した国々の学力の惨状と、デジタルをやめて紙と鉛筆に戻した教育現場の勝利から見る日本のこれから
人の思考力を奪うデジタル教育!
大学生の読解力が小学4年生レベル
エコノミスト誌が、アメリカの大学生を含む OECD加盟国 38カ国の学生の学力のあまりの低下ぶりを記事にしています。
その見出しは、
「大学に通う学生の中には、10歳児と変わらない学力レベルの者もいる」
でした。
このエコノミスト紙を引用していた記事をご紹介しようと思うのですが、その記事の中に、数字としてちょっと特筆すべきエピソードが書かれていました。
それは、以下の下りです。
ミネアポリスのある教室では、文学と英語の教師がスマートフォンとノートパソコンの使用を禁止し、すべての課題を鉛筆と紙で行うように指示した。9月に新学期が始まった時点では、参加した生徒のうち読解力に自信があると答えたのはわずか 46%だった。数か月後の 2月には、その割合は 95%にまで上昇した。
歴史
引用元の記事によりますと、正確には、以下のような流れです。
米ミネアポリスのウォッシュバーン高校という学校で、文学と英語を教えている教師であるモーリーン・マルバニー氏は、生徒たちが盗作をし続け、集中力がなく、識字率が急落していることに苛立ちを感じて、以下のような、
「ローテクな実験」
始めました。
その流れと結果は以下です。
・スマートフォンとノートパソコンの教室での使用を完全に禁止。
・すべての課題を鉛筆と紙で実施(短い本の無言の読書と、手書きの作文から開始)。
・結果:アメリカの新年度である 9月の「読解に自信がある」生徒の数が 46% から 2月には 95% に急激に上昇(ただし、自己申告)。
・79%の生徒が「紙の方が考えを整理しやすい」と回答。
・手書き量が増え、クラス内のつながりも向上したという。
この「自信がある」という回答は自己申告ベースであり、客観的な学力テストの結果の向上ではないとはいえ、「読解力に自信があると答えた生徒が 46% → 95%に増えた」というのは、なかなかのことで、「自信」というだけでも、それは大変なプラスになるはずです。
紙と鉛筆に戻すだけで、すべての学力の問題が解決するわけではないにしても、「相当貢献する」とは思います。
デジタル教育の先端国ではすでに紙と鉛筆に回帰している
一方で、日本は、「デジタル教科書を正式に導入する」という大変に時代遅れの政策を発表しています。
デジタル教科書、正式導入へ 無償配布の対象に 関連改正法成立
デジタル教科書を正式な教科書と位置づけ、無償配布の対象とする改正学校教育法などは10日の参院本会議で、自民党や日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。次期学習指導要領が小学校で全面実施される2030年度からの導入を見込み、27年4月に施行される予定。
毎日新聞 2026/06/10
時代遅れというか、「まったく他の世界のことを見ていないのだなあ」と、つくづく思うと共に「日本の子どもたちにもっとイディオットになってもらいたいのかなあ」というような懐疑的な気持ちにもなります。
世界に先駆けてデジタル教育を導入したスウェーデンは今では「紙と鉛筆に回帰して」います。理由は、
「デジタル教育導入以降、子どもたちの成績が悪くなりすぎたから」
です。
報道には以下のようにあります。
2023年、スウェーデン政府は、国内の学校教育を基礎に立ち返らせ、特に低学年において読み書きなどのスキルを重視すると発表した。
これまでほとんど使われなくなっていた紙の本が教室に再び導入され、生徒たちは昔ながらの方法で、鉛筆やペンを使って紙に手書きで書くことを学んでいる。スウェーデン政府はまた、全国の学校でスマートフォンの使用を禁止する計画も立てている。
教育当局は多額の投資を行っている。昨年だけでも、教育省は教科書と教師用指導書の購入に 8300万ドル (約 135億円)を投じた。人口約 1100万人のこの国では、すべての生徒が各教科の教科書を紙媒体で入手できるようにすることが目標となっている。政府はまた、生徒向けの小説やノンフィクション書籍の購入にも 5400万ドル (約 87億円)を拠出した。
これらの動きは、スウェーデンをはじめとする多くの国々が、オンライン社会での生活に生徒を準備させるため、紙の書籍からタブレットやデジタル教材へと移行してきた過去数十年間からの劇的な転換を意味する。
では、なぜスウェーデンは方針転換したのだろうか?
人々、社会リンネ大学の教員養成研究者であるリンダ・フェルト氏は、紙の教科書への再投資は、いくつかの要因によって促されたとして以下のように述べている。
「スウェーデンはデジタル教育の先駆者としての地位を確立していましたが、時間が経つにつれて、スクリーンタイム、注意散漫、深い読書の減少、持続的な注意や手書きといった基礎的なスキルの低下に関する懸念が生じてきました」
2000年から 2012年にかけて、スウェーデンの生徒の標準テストの成績は、読解力、数学、科学の分野で着実に低下した。2012年から 2018年にかけては回復したものの、2022年には再び低下した。
デジタル依存教育に良い面は基本的にはないと思います(教えるほうは、いろいろと楽になるという面はあるでしょうけれど)。
ちょっと前置きが長くなりましたが、ともかく、まず、その現在の大学生の学力レベルを嘆いている記事をご紹介します。長い記事ではないです。
大学生の学力テストの成績は10歳児レベル
College Students Are Testing at the Level of 10-Year-Olds
futurism.com 2026/07/04
あなたは小学4年生より賢いだろうか?
大学一年生がプラトンのような古典哲学者やタ=ネヒシ・コーツのような現代教育者の著作を読む時代は終わった。
今どきの大学生は、ジュディ・ブルームの『4年生の何でもない物語』 (※ 小学校4年生が主人公のアメリカの児童文学)を読み終えることができれば幸運だ。
主に西側諸国を中心とした 38カ国の高所得国からなる経済協力開発機構(OECD)が実施した新たな「成人スキル調査」によると、高等教育機関に在籍する成人の学生の中には、本来であれば中学生であっても懸念を抱かざるを得ないようなレベルの読解力や数学力しか持ち合わせていない者が、決して少なくない数存在している。
エコノミスト誌が最初に報じたこの調査は、OECD 加盟全 38カ国のあらゆる年齢層の約 16万人を対象に実施された。
その結果、加盟国全体で、実に 8%の大学生が 10歳児、あるいはそれ以下のレベルの読解力しか持たないことが明らかになった。
ドイツやフランスではその割合が 5%未満にとどまったのに対し、ポーランド、イスラエル、米国ではそれぞれ 21%、20%、14%に達し、突出して高い数値を示した。
数学に関しても、状況はさほど改善されていない。OECD 諸国全体では、大学生の 9%が 10歳児レベル以下の数学力しか持っていない。イタリア、アメリカ、スロバキアでは、 10歳児レベル以下の数学力しか持たない割合は 15%を超え、イスラエルでは、大学生の約 21%が同じ低い基準を下回っている。
これらのテスト結果には、多くの複合的な要因が絡み合っているようだ。例えば、パンデミック時代の学習格差による準備レベルの低下、大学入学者の減少による入学基準の引き下げ、教育に対する公的資金の減少などが挙げられる。
この結果は、ChatGPT のような大規模言語モデル(生成 AI)の爆発的な普及とも時期を同じくしており、多くの見方によれば、これらのモデルは小中高教育と大学教育の両方において、学業不振の新たな基準を打ち立てたと言える。
この問題が複雑であることは否定できないが、教室からテクノロジーを完全に排除することが、即効性のある改善につながる可能性を示す証拠も存在する。
例えば、ミネアポリスのある教室では、文学・英語の教師がスマートフォンやノートパソコンの使用を禁止し、すべての課題を紙と鉛筆で行うよう義務付けた。
9月に新学期が始まった当初、自身の読解力に自信があると答えた生徒はわずか 46%だったが、数ヶ月後の 2月にはその割合が 95%にまで上昇した。
これはあくまで一つの教室での事例に過ぎないが、世界で最も豊かな国々の教育システムにおいて、何かが明らかに軌道を外れてしまっていることは明白だ。
そして、この問題が放置され続ければ、小学4年生レベルの読解力しか持たないまま社会に送り出される大学生がますます増えていくことになるだろう。
ここまでです。
この記事にもありますように、確かに、この問題の要因は複雑ではあるのでしょうが、現状があまりにもひどいことも事実です。
繰り返して書くのもあれですが、これは、
「大学生の調査」
ですからね。
特に、アメリカの学生の学力レベルについては、よく報じられていて、過去に以下のような記事を翻訳しています。
「現在のアメリカの子どもたちの3分の2は字が読めない」という米国報道
NOFIA 2023年12月13日
米イリノイ州の30校で「学年レベルの読み書きができる生徒がゼロ」であることが判明
NOFIA 2025年3月22日
米イリノイ州の4年生のうち、読解力が標準に達しているのはわずか30%
NOFIA 2025年4月23日
これらがすべて、スマートフォン、あるいは AI や SNS のせいだとは言いませんが、「多少は関係ある」とは思います。
米マサチューセッツ工科大学の研究を紹介していた記事では、以下のようにも書かれています。
2025年7月5日の米メディアの記事より
先進国ではすでに教育成果が低下しており、米国では中学2年生の 3分の1が基礎レベルの読解力さえない。これは子どもだけでなく、大人にも当てはまる。米国の成人の半数以上が小学6年生以下の読解力しかないのだ。
この傾向はパンデミック以前から始まっていたが、パンデミックによって悪化した可能性もある。また、スマートフォンも一因となっている可能性がある。
学校でスマートフォンを禁止した国では、生徒の学習成果が向上しており、研究はスマートフォンを身近に置くだけで注意力や集中力が低下するという考えを裏付けている。
SNS とショート動画の長期間の視聴は、脳が考える忍耐力を低下させて「脳の腐敗」という状態を導くこともわかっています(脳の腐敗は、正式な医学用語ではないです)。
AI生成動画が広める若者たちの「脳の腐敗」が導くオール・イディオット社会まではわりとすぐかも
In Deep 2026年1月22日
アメリカの学力テストでは、2012年を頂点として、そこから、激しくスコアが下がり続けています。
アメリカの9歳の「読解力」の平均スコアの推移
indeep.jp
要因は複雑とはいえ、OECD加盟国の大学生の学力が軒並み低下しているという現実は、あまり良いことではないです。
なぜなら、社会は若い人たちが作っていくもので、そして、今後の社会はこれまでより、はるかに混乱や困難が伴うものと考えられるからです。そこでは、ある程度の合理的・論理的な思考を持つ人たちの存在は重要です。感情だけで生き残っていけるような単純な社会ではなくなると思われます。
日本もできればデジタル教育依存の方向から抜け出してほしいのですけれど。




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