熱中症での死亡率は「世界の中で日本がダントツのトップ」であることを示す医学誌ランセット掲載の論文
暑さでの死亡率の圧倒的な高さを誇る日本
この 6月、7月は、ヨーロッパや、アメリカ、あるいは地域的に中国などの熱波が顕著でした。
それに伴い、「熱中症による超過死亡」という報道がよくなされます。
・6月の欧州熱波、仏オランダ・ベルギーで超過死亡3700人 (ロイター 2026/07/03)
・「イベント会場の椅子の温度が70度まで上昇」…米国の猛暑で少なくとも25人死亡 (中央日報 2026/07/06)
ヨーロッパの場合、この 6月、7月は、これまでではあまり起きなかった「数日連続の 40℃前後」などの高温が続いた地域があった上に、エアコンを設置している世帯の数が極端に低く、ある程度は理解できる部分はあるのですが、今年の夏の状況というのとは関係なく、
「全般的な熱中症での死亡率の各国の比較」
ということを考えたことはありませんでした。
ところが、それが医学誌ランセットにあったのですね。
多国間・多都市共同研究ネットワークという国際的な枠組みのプロジェクトに参加している 34カ国の熱中症の死亡率を比較したものです。
では、どの国が熱中症での死亡率が高かったのか?
たとえば、エアコン設置率が世界でダントツに高い日本はどうなのか?
もう、これはグラフを見れば一目瞭然でして、少し大きなグラフになりますが、以下です。
熱中症での死亡率の34カ国の比較 (100万人中)

ダントツで日本であることがわかります。
熱中症による死亡率の上位5は以下となります。
熱中症による死亡率ランキング(人口100万人あたり)
1位 日本 5.83
2位 キプロス 2.51
3位 中国 2.42
4位 米国 1.46
5位 フランス 1.26
日本が 5.83なのに対して、日本より暑い日が多いであろう台湾は 0.05、タイは 0.09、イタリアにいたっては 0.02 などとなっています。0.02 (人口 100万人に対して 0.02)という数字は、熱中症で亡くなる人が「事実上いない」ということを示しています。
とにかく、日本は飛び抜けて熱中症による死亡率が高いのですが、理由については、論文を読んでも今ひとつわかりません。医療見識の遅れということは該当しないでしょうし、何でなんでしょうかね。
論文には他にもいろいろとグラフがありますが、とにかく日本の「暑さでの死亡率の高さ」は突出しています。
論文には「暑さ全般(日本でいう30℃代などでしょうか)」と「猛暑 (日本でいう 35℃以上などでしょうか)」で死亡率を区分しているものもありましたが、こう書かれています。
> 例えば、日本では猛暑による死亡の 54.1%、米国では 23.0%、フランスでは 20.8%、オーストラリアでは 20.5%が熱中症によるものであり、最も激しい暑さの時期には熱中症の寄与度がより大きいことを示している。
日本の「通常の暑さ」と「猛暑」での死亡率の比較
猛暑での死亡率も日本はダントツであるようです。
なぜだ?
ちなみに、これとは関係ない話ですが、全世界でいえば、「暑さより寒さのほうがはるかに死者を出している」のが現実で、たとえば、北米では、寒さによる死者は、暑さによる死者の 40倍となっています。以下の記事にグラフなどがあります。
ランセットに掲載された「暑さで死亡する率」と「寒さで死亡する率」を比較したグラフから見る統計のイリュージョンが普遍化したこの社会
In Deep 2023年7月29日
ともかく、なかなか不思議ではありつつ、わりと衝撃的な熱中症による各国死亡率の対比でした。
ランセットの論文の概要を掲載しておきます。
熱中症による死亡報告のばらつき:複数国調査からのエビデンス
Variation in reporting of heatstroke mortality: evidence from a multi-country study
The Lancet 2026/03
概要
背景
熱中症は、熱曝露による最も重篤な症状である。熱中症はまれな疾患であり、報告されることも少ないため、世界的な発生率や疾病負担に関する実証データは限られている。本研究は、複数の国における熱中症死亡率の地理的変動と経時的変化を調査することを目的とした。
方法
2000年から 2022年にかけて、多国間・多都市共同研究ネットワークに参加した 34か国から、ICD-10コードX30 (※ 国際疾病分類において「自然の過度の高温への曝露」を指す外因分類のコード)を用いて、熱中症による年間死亡率データを収集した。
ポアソン回帰 (※ 統計手法の一種)を用いて国別の死亡率を推定するとともに、年間傾向と温暖期の平均気温との関連性についても分析した。また、熱中症による死亡が、全体的な熱中症による死亡と極端な暑さによる全死因死亡の両方に占める割合も評価した。
調査結果
熱中症による死亡率は国によって大きく異なり、日本が最も高く(人口 100万人あたり 5.81人)、次いでキプロス(2.51人)、中国(2.42人)となっている。対照的に、ヨーロッパ、南米、東南アジアのほとんどの国では、人口 100万人あたり 1人未満の死亡率が報告されている。
熱中症による死亡率はいくつかの国で時間とともに増加しており、ほとんどの地域で温暖期の気温と関連していた。熱中症による死亡が熱による死亡全体に占める割合は、多くの国で 1%未満から、日本では 24%近くまで幅があった。極端な暑さによる死亡に分析を限定すると、熱中症による死亡の割合は大幅に増加した。




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