大阪の警官発砲の死亡事件にSNSで「テーザー銃導入を」の声…元国家公安委員長が明かす「ネック」と「利点」
最大のネックはその価格で1丁20万円と維持に金がかかりすぎる
8月4日、大阪府河内長野市で、刃物を持った男に対し警察官が発砲。近くに住む無職の土屋重吉容疑者(60)が死亡した事件が波紋を広げている。
社会部記者が言う。
「110番通報で駆け付けた警察官らに対し、男が刃物を向けてきたため、警察官の1人が『刃物を捨てろ』と警告し、上空に向けて拳銃を1発威嚇射撃しました。警告後も男が向かってきたため、その警察官が男に向けて1発発砲し、男の胸に命中。男は病院に搬送されましたが、死亡しました。死因は胸を撃たれたことによる『出血性ショック』でした。今のところ、発砲の要件は満たしていると思われます」
しかし、この事件では男が警察官の発砲により死亡したことから、X上にはテーザーガン(テーザー銃)を日本の警察でも導入すべきではないかという意見が相次いでいる。
「テーザーガンは、米国や英国など世界40カ国以上の警察機関などで導入されおり、電気ショックで相手の動きを封じ込めることが可能です。基本的には低致死率の武器ですが、日本の警察は導入していません」(同前)
こうしたことから、X上にはテーザーガンの導入を提案する声が相次いでいる。
《日本の警察もテーザーを導入したらええのに》
《警告もして、空に向かって威嚇射撃もしたのに刃物持って向かってきたんやろ?警官は悪くないと思いますけどね。もうテーザー銃いれたら?》
《もし撃たせたくないならテーザーガンの導入など別の策を提案してほしい》
民主党政権時代の野田佳彦内閣で国家公安委員長を務めた松原仁前衆院議員はこれまでに3回、テーザーガンの導入を訴えるべく、質問主意書を内閣に提出している。
松原氏にテーザーガンの導入を訴える思いを聞いた。
「きっかけは知人の元女性警察官から、『日本の警察もテーザーガンを導入した方が良い』と聞いたことです。特に女性警察官が凶暴な男性の犯人と対峙した際、さすまたなどを使って相手を傷つけないように制圧するには、そうしたものも必要だと。警察官も訓練はしていますが、警察官個人の対処能力や相手によっては事情も変わってくる。テーザーガンは警察官の身を守ると同時に相手をできるだけ傷つけずに制圧するという点で優れているのではないかと考えています。
警察庁も導入を検討はしているのです。ただし、現在まで導入に至っていない一番大きな理由は、値段が高いという予算の問題だと聞いています。拳銃の10倍ほどするようです。最新型のTASER10の場合、部品の交換などのランニングコストを含めた5年間の総コストが20丁で15万ドル(約2400万円)ですから、1丁当り120万円くらいかかります。大量購入であれば、単価はぐっと下がるはずですが、それでもテーザーガンの導入には相当な予算が必要です。日本の警察もテーザーガンが有効であることは認めています。ネックは値段です」
テーザーガン導入が進まないのは、予算の問題だと松原氏は言う。テーザーガン自体は致死率の低い武器なのだが、使用する際には注意も必要なのだという。
「テーザーガンを撃たれたことそのもので死亡する例は極めて少ないのですが、例えば相手が階段にいるときに使用して倒れて転げ落ち、頭を強打して死亡するなども例もあるようです。また、心臓病やペースメーカーを埋め込んでいる対象者に使うと死亡するリスクが高まるため、使用できないなどの制限はあると思いますが、状況に応じた運用方法を明確に定めればいいわけです。
テーザーガンが配備されたということを公にすることには意味がありますから、どういう形であれ、配備することを考えたほうがいいと私は主張しています。たとえば、女性警察官には各1丁持たせるとか、予算上それが厳しければ、女性警察官が警らで出動する際には持たせるとか。自動車警ら隊だけは一定数配備するとか。ベストは1人1丁だと思いますが、海外で導入されているのに、日本は予算の関係で導入できないというのはちょっと納得しがたいですね。今回の大阪の事件では、警察官は適切に対処したと思いますが、テーザーガンを使用していれば死亡することを防げたはずですから、テーザーガン導入をもう一度検討し直すきっかけになると思っています」(松原氏)
あらためて、松原氏にテーザーガンの利点について聞くと、こう答える。
「最新型TASER10は音や光で威嚇する機能もあり、拳銃よりも威嚇力があります。米国ウェイク・フォレスト大学教授のウィリアム・ボーズマン医学博士が2009年に米国緊急医学会の学会誌に発表した論文によれば、1201件の事例中、テーザーガンを使用された99.75%の対象者は全く負傷していないか軽微なケガをした程度でした。負傷した3件のうち2件は転倒した際の頭部外傷で、残る1件は横紋筋融解症でした。ボーズマン博士は『警察が暴力的または戦闘的な容疑者を制圧するときに用いる他の選択肢と比較すると、テーザーガンはたいへん安全のように思える』と述べています。
次に、跳弾の危険が極めて低いことや犯罪者に奪われた場合の危険も極めて低いことも挙げられます。それから、警察官の精神的負担が極めて低いことも挙げられます。被疑者殺害の可能性はぼぼゼロです。拳銃発砲は警察官にとってものすごいストレスです。今回の大阪の事件では、胸に命中したこともあり、相手の動きを封じ込められましたが、当りどころによっては、相手が倒れないでそのまま向かってくる場合もあります。が、テーザーガンなら完全に動きを封じ込められます。
そして、拳銃よりも幅広い状況で使用可能です。刃物を手にしているものの、直ちに使用する様子がない被疑者、こん棒を手にしており、警棒での制圧する必要がある被疑者などと対峙した際に有効です。また、女性警察官や、体力に自信のない警察官の活躍の場が広がり、警察官採用難の解決の一助となります。さらに、これまで拳銃の場合は『撃てないだろ。撃ってみろ』というように被疑者になめられていたような場面でも有効でしょう」
警察庁にテーザーガンの導入について、取材を申し込んだが、「回答しない」とのことだった。念のため、警視庁にも同様の質問をしたところ、「警視庁としてお答えできる内容はありません」とのことだった。
松原氏は現在落選中の身だが、引き続きテーザーガンの導入を訴え続けていく所存だという。


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