「ミスがガンガン起こっている」混迷の『トランプ関税』“上乗せ”は政府間の技術的ミス?
峯村健司氏「トランプ政権は空席多く意思疎通も緩い」
日米合意後も、混迷を極めている「トランプ関税」。
2025年8月7日、日本時間午後1時1分に発動されましたが、その内容は、日本が合意した「従来の関税率が15%未満の品目は15%に引き上げ、15%を超えるものはそのまま追加関税は課されない」というものではなく、「日本からのすべての輸入品に、15%の相互関税を上乗せして課す」というものでした。

この事態を受け、訪米中の赤沢亮正経済再生担当大臣は、日本時間8日朝に以下のコメントを発表しました。

赤沢経済再生担当大臣:
過去一貫して相互関税にかかる合意の内容についての日米間の認識に齟齬はありません。すなわち、既存の関税率が15%以上の品目には課されず、15%未満のものについては、既存の関税率を含め、15%が課されるということです。
今回の訪米中この点について、米国閣僚との間で改めて繰り返し確認をいたしました。相互関税に関する大統領令を発出する際の米側内部の事務処理に当たって、日米間の合意に沿っていない内容の大統領令が発出され、適用が開始されたことは、極めて遺憾です。
米側閣僚からも、今回の米側の手続きは遺憾であったとの認識の表明がありました。

さらに、米側が相互関税に関する大統領令を修正する措置をとるのと同じタイミングで、自動車・自動車部品を引き下げる大統領令を発出することも確認しました。
引き続き米側に対し、可及的速やかに相互関税に関する大統領令を取るよう、また、自動車・自動車部品の関税を引き下げる大統領令を発出するよう、あらゆるチャネル(手段)を通じて強く申し入れてまいります。

それでも日本政府が合意の履行を優先した結果、上乗せや25%ではなく、15%で済んでおります。共同文書を作成していないから何か起きたというものは、私は全く理解ができないご主張でございます。

いったい交渉の裏に何があったのか、キヤノングローバル戦略研究所の上席研究員・峯村 健司氏に詳しく聞きました。
「トランプ政権は何が起こるか分からない」
――赤沢大臣の発言は要約するとどのような内容なのでしょうか?
峯村健司氏:
一言で言うと「上乗せはされません、大丈夫です」と。日本側が説明していた通りになったということですね。

渡辺正行氏:
前もそう言っていて、結局なんかまたこじれてこう…あったじゃないですか。今回の発言は協議をしてちゃんと大丈夫だよっていう発言なんですか?
峯村健司氏:
そうですね、今回ラトニック商務長官と会って、私も現地の取材をしたら、ベッセント財務長官とも赤沢さん会ったそうで、2人のキーパーソンに会った上で、確認をしたと。
渡辺正行氏:
で、赤沢さんは発表したけども、また、アメリカは違う発表をするとかないんですか?
峯村健司氏:
あの、「トランプ政権は何が起こるか分からない…」というところはあるんですが、基本は大丈夫だと思います。

――特例措置を受けられず、過払いとなった分は、7日にさかのぼって払い戻されるというということですが?
峯村健司氏:
自動的に取ることになってしまうので、関税がかかっちゃうんです。それについては、もう一回払い戻しますと。アメリカ側としては「ごめん、間違えた」ということで、払った分に関しては遡及してもう一回戻しますと。(完全にアメリカ側のミスだと)認めた。
――なぜ合意文書を作らなかったのですか?
合意文書をガチッとつめてあれば、こういうことは起こり得なかったというのは間違いないです。ただ、赤沢大臣も言っていたように、これが全ての原因ではないです。
7月21日・22日の最後の交渉で、8月1日という締め切り日があったということで、時間がなかったんですね。もし、合意文書をつめていると、もう間に合っていなかった。結局また25%の関税がかかってしまうという意味では、作らなかったのは仕方ないことではあると。
逆に、合意文書を作るだけで、またトランプさんがいろいろ言ってくるわけです。じゃあ作ってやるから、もっと下げろ、もっと他のものを出せと言ってくるので、そういう意味では作らないという判断は間違っているわけではないと、ただ今回のような認識のずれは起きてしまったと。EUは合意文書を作ってはいますが、中身はつめていない。

峯村健司氏:
今回、なぜこのような事態になったのか、その真相がきのうの夜からずっと取材をして分かったのですが、アメリカ側の政府間の技術的ミスというところなんです。
なぜかというと、関税を扱っているのが「USTR(アメリカ通商代表)」というところがやっていると、実は日本側が交渉していたのが商務省なんですね。そこら辺の意思疎通がうまくできていなかったと。

縦割りどころか、トランプ政権あるあるなんですけども、結構そういうところがツメが甘かったり。また、政権が発足してからそんなに時間がたっていないので、実は幹部の人事が結構空席のままなんです。だから、人がいないところでやっているので、こういうミスがガンガン起こっているんです。色んな国の交渉で。
赤沢さんとトランプさんは目の前で交渉していて、だからこそトランプさんはOKと言って、日本も大丈夫だと思ったのですが、トランプ政権内はまだ空席が目立つ、さらに意思疎通も緩かったりするので…。結局細かい文書を作る段階で落ちてしまったというのが真相です。

――赤沢大臣は振り回されたと?
振り回されていますね、ただ赤沢さんだけじゃなく、他の国も振り回されまくっています。
結構時間もなくて、アメリカも日本だけではなく数十カ国と交渉しているわけで、バタバタでやっているそうです。きのう聞いた商務省の関係者が、「もう、別に日本とだけうちはやっているんじゃないんだ」とこぼしたりしていました。
――今回の騒動で、かなり影響を受けた投資家はいると思いますが
やはり、トランプ政権の見方をしっかりするということですね。普通の政権とはちょっと違うと…、決定も早いですし、結構ツメが緩かったりするというのを見ないと、大損こいてしまいます。その癖を見ると、稼げるかも知れません。

――今後一応は「一件落着」という方向に向かう?
向かうと思います。結構重要な会合だったと思います、うまくしっかりと巻き戻したというか、セットしたという意味でも大きいと思います。
赤沢さんがSNSでラトニックさんとの写真を載せて、「ラトちゃん」と書いていましたが、かなり仲がいい、信頼関係はできているらしいです。6月7月くらいでいうと、毎日ラトニックさんと赤沢さんは電話会談をしていたらしいです。
(「サン!シャイン」 2025年8月8日放送)
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