《税金取られすぎの実態》会社員は4年間で“賃上げ率の3倍”も所得税負担が増加

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財務省と農林省のタッグ 税金

《税金取られすぎの実態》会社員は4年間で“賃上げ率の3倍”も所得税負担が増加

「今の日本に必要なのは、消費減税より手取りを増やす所得税減税」と荻原博子氏

 石破政権は7月の参院選後の秋の臨時国会で物価高などを受けた経済対策のための補正予算を組むとしているが、国民が求める「減税」には消極的な発言を繰り返している。その姿勢は海の向こうの指導者と対照的だ。

 トランプ米大統領が4月27日、SNSで所得税の大幅減税をぶち上げ、「年収20万ドル(約3000万円)未満の人々が焦点になる」と低所得者だけでなく、幅広い層を減税の対象にすることを示した。

 トランプ氏は1期目の2017年にも所得税・法人税の大減税を成立させ、実行した。今回はそれに続いて第2弾にあたる巨大規模の「トランプ減税」である。

「今の日本に必要なのは、手取りを増やす所得税減税」

 翻って日本は与党も野党も消費減税論一色だ。

「消費減税と言いながら『食料品だけ税率ゼロ』だったり、減税期間も1年限定とか、長くても2年くらい。これじゃ昨年の定額減税と同じ。砂漠に柄杓で水を撒くようなものです。1回限りの消費減税では継続的な物価高騰対策の効果は期待できません。今の日本により必要なのは、手取りを増やす所得税減税のほうでしょう」

 そう指摘するのは経済ジャーナリストの荻原博子氏だ。

 物価高騰が再び加速し、この5月もハム・ソーセージなど平均15%の値上げラッシュ。今年通年の値上げは2万品目を超えると予想され、消費者物価(総合)は毎月4%近く上昇している。消費税率を下げれば、物価抑制の効果は期待できる。

 だが、国民にとってより厳しいのは、物価高騰のなか、実質賃金が下がり続けて「手取り」が大幅に減っていることだ。政府や新聞・テレビは、その原因を「賃上げが物価上昇に追いついていないからだ」というが、それだけではない。重大なことを隠している。

 この間、サラリーマンが所得税を取られすぎてきたことだ。

平均給与は4.8%アップの一方で所得税は3倍の15%増にも

 どれだけ取られすぎているのか。国税庁の民間給与実態統計調査のデータを見るとよくわかる。

 2023年の給与所得者(サラリーマン)の1人あたりの平均給与(年間)は459.5万円でコロナ前の2019年より4.8%アップした。

 それに対して給与所得者が源泉徴収された所得税の総額は、約10.3兆円から11.9兆円へとなんと15%も増えたのだ。給与所得者の人数はほとんど変わっていない(1.5%増)。

 政府は「賃上げ、賃上げ」と宣伝しながら、国民が気づかないうちに賃上げ率の3倍もサラリーマンの所得税負担を増やしていたのである。それでは生活が苦しくなるはずだ。

 なぜこんなに税金負担が増えるかというと、所得税は給料が多いほど税率が高くなる。物価上昇の局面では、たとえ実質賃金がマイナスでも、賃上げで給料の額面がアップした分、より高い税率の所得税を課せられてしまうからだ。これを専門用語でブラケットクリープと呼び、他の国では控除を引き上げたり、税率区分を変えて減税するが、財務省はそれをやらずに税収増にほくそ笑んでいる。消費減税で物価上昇を抑制するだけでは、この取られすぎた税金は戻ってこない。

 荻原氏が「所得税減税」こそが必要とされる理由もそこにあると言う。

「サラリーマンの実質賃金はマイナス。収入は目減りしているのに、名目で賃金が上がっているから所得税が多く取られてしまう。これが今の所得税の状況です。政府はそれを庶民に還元すべきでしょう。それには所得税を減税するのがいい。インフレで増税状態なのだから、一時的ではなく、恒久減税が必要です。所得税を思いきって減税することで、物価高でも消費が活発化し、経済にプラスになります」

 日本にこそ、トランプ氏のような「減税バズーカ」が求められている。

※週刊ポスト2025年5月30日号

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