《渦中の官僚を直撃》高市首相の「減税反対派粛清人事」は財務省エースの“左遷”だけにとどまらなかった
内閣府からも財務省出身者を一掃、次官人事を人質に強権発動
財務省の次官候補だったエース官僚の突然の“左遷”は霞が関に衝撃を与えた。高市早苗・首相が進める「食料品の消費税減税」に消極的とされる財務官僚が“見せしめ”として追放されたといわれるが、高市首相の「増税派粛清人事」はそれだけにとどまらないようだ。
高市首相に“左遷”された財務省の一松旬氏を直撃
渦中の人物の声には気落ちした様子は感じられず、力強い響きがあった。 「人事については私から申し上げることはありません」
高市首相に“左遷”された財務省の一松旬・前主計局次長は本誌・週刊ポストの直撃に言葉少なにそう語った。 「10年に1人の大物」と呼ばれた一松氏は財政規律重視派として知られるが、「消費税減税に抵抗した」という理由で次官コースの主計局次長から退官を待つ“上がりポスト”の東京税関長に飛ばされ、次官の芽を摘まれたと見られている。
政治ジャーナリストの長谷川幸洋氏(元東京新聞論説副主幹)が指摘する。 「官僚人事については安倍政権時代に内閣人事局が創設され、各省庁の審議官級以上の幹部の人事権は大臣ではなく官邸が握ることになった。官僚主導政治から政治主導に改めるためだ。その意味で高市首相の減税方針に従わない官僚が枢要ポストから外されるのは制度の趣旨にかなっている」
とはいえ、時の首相が「省の中の省」といわれるほど強大な権限を握る財務省の次官コース人事に露骨に介入したのは、角福戦争と呼ばれた時代に田中角栄・首相が積極財政に反対した次期次官候補の橋口収・主計局長を飛ばし、「親田中」だった高木文雄・主税局長を次官に抜擢して以来の強権発動と言っていい。
内閣府の中枢からも財務省出身者を一掃
高市首相の「増税派粛清人事」は一松氏だけにとどまらなかった。
財務省では次官コースとされる3人の主計局次長を全員交代させたうえ、一松氏と入省同期(1995年入省組)のもう一人の将来の次官候補で、今回の人事で主計局次長に就任すると見られていた大沢元一氏を主税局担当の官房審議官に回したのだ。
「大沢氏も一松氏と同じ財政規律重視派だが、一松氏がコースを外れたことで将来の次官の可能性が高まった。総理がその大沢氏を消費税減税法案の担当となる主税局担当審議官に据えたのは、“次官になりたければ私の減税方針に従え”と踏み絵を迫るような人事だ」(財務省OB)
さらに、首相のお膝元の内閣府でも、財務省出身の井上裕之・次官が退官、阿久沢孝・政策統括官も出身の財務省に戻され、中枢幹部から財務省出身者が一掃された。
内閣府には「骨太の方針」(経済財政の基本方針)を決める経済財政諮問会議など多くの重要政策に関する会議が設置されている。これまで財務省は内閣府の中枢に幹部を派遣することで時の政権の重要政策に影響力を行使してきたが、1人もいなくなるのは前代未聞だ。これも、「高市総理が財務省の内閣府の政策への介入を嫌った」(他省幹部)と見られている。
財務省にこれらの人事について聞くと、「人事異動の内容を個別に説明することは差し控えさせていただきますが、いずれの人事においても、適材適所の観点から配置したもの」(広報室)と答えた。
「官僚は使用人」という感覚で人事権を発揮
財務省にすれば、人事権を持つ官邸の指示とはいえ唯々諾々と従える内容ではなかったはずだ。
首相が巧妙だったのは、財政規律重視派の中心人物である宇波弘貴・前主計局長の「次官昇格」を人質に取ることで財務省に一連の人事を飲ませたことだという。
前出の財務省OBが語る。 「財務省にとって最優先事項は宇波主計局長を次官にすることだった。省内ではすでに次期次官候補は宇波氏1人に絞られていたから、それをひっくり返されたら省内の人事が全部狂ってしまう。
ところが、次官の人事案については今年はじめに財務大臣から内閣人事局にあげていたのに、高市総理は宇波氏の次官昇格について内諾を与えないまま半年間棚ざらしにすることで、“消費税減税に協力しなければ宇波次官昇格を認めない”という姿勢をとった。最終的に宇波次官は承認されたが、官邸はその代わりに財務省が減税に協力的でなかった責任を一松人事で見せしめにした。一松氏はスケープゴートにされたようなものだ」
そうした高市首相の人事のやり方を、財務省OBで自民党税調会長を長く務めた野田毅・元自治相は、「強い総理を演出するために有能な官僚を切り捨てた」として、こう指摘する。
「高市さんからすれば、気に入らん奴は外す。(官僚は)使用人という感覚でおられるわけでしょうから、強力な人事権を発揮することで強い首相を演出しようとしているのでしょう。自分の意思に反することをする人は、“私の内閣では要職に入れない”という強い意思を出した。役人の言うことはあまり聞かないというのは有名で、それを地でいっている。ですから役所の皆さんは大変な時代を過ごしてますよ。正論を言えば飛ばされるのだから、どこの役所も皆、首をすくめています」
関連記事では、高市首相が幹事長人事と内閣改造で、減税反対派を粛清する計画について、詳細にレポートしている。


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