【高齢者へのトリプルパンチ】所得減、年金減に加え医療・介護費負担増も

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老人ホーム 政治・経済

【高齢者へのトリプルパンチ】所得減、年金減に加え医療・介護費負担増も

「全世代型社会保障」が幻想に過ぎない理由

 いよいよ、団塊世代がすべて後期高齢者入りしようとしている。政府が進める「全世代型社会保障」は、膨張する高齢者の医療・介護費を現役世代が負担しきれなくなっていることが背景にある。そのため、高齢者にも負担増を求める制度改正が進められているが、高齢世帯の暮らしも決して楽ではない。それどころか、これから高齢者になっていく世代も、今以上に生活が厳しくなると予想されるというのだ。少子高齢化問題に詳しいジャーナリストの河合雅司氏が解説する。【前後編の後編。前編から読む

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 公的年金が収入の主柱である高齢者は、支出が増えたからと言って簡単に所得を増やせるわけではない。

 働く高齢者は珍しくなくなったが、現役時代のような水準の所得を得られる人は稀だ。岸田文雄首相は「インフレ率を超える賃上げの実現」を訴えているが、週に数日働いて年金収入の足しにしている高齢労働者の懐がそう簡単に潤うわけではないだろう。

「老後資金2000万円問題」が大きな話題を呼んだことでも分かるように「公的年金だけでは暮らしていけない」という人が大多数である。勤労所得を増やすことが難しく、年金受給額はインフレ率を下回るように調整されるダブルパンチだけでも大変なのに、全世代型社会保障改革によって医療や介護の高齢者負担増が加わったのではトリプルパンチとなる。現在のような急速な物価高に見舞われる局面においては生活に支障が生じる人も出てこよう。

高齢者全体から「薄く広く」徴収するのにも限界がある

 年金受給者は現役世代よりも住民税非課税世帯の対象となる所得要件が甘いとはいえ、高齢世帯の3分の1ほどが住民税非課税世帯となっている。非課税世帯は医療費や介護費の自己負担軽減、政府や地方自治体の給付金や補助金の対象になりやすいといった恩恵も少なくないため、最近では老後不安への対策として、あえて住民税非課税世帯を目指す人まで登場している。

 高齢者全体から「薄く広く」というのは無理があるのだ。いくら2040年代初頭まで高齢者数が増加すると言っても、高齢者の負担能力の低さを考えると現役世代の負担を大幅改善できるほどにはならないだろう。

 高齢者には裕福な人もいるが、富裕層に対しては「全世代型」を語るまでもなく「現役世代並み」の負担がすでに課されている。仮に富裕層にさらなる負担を求めることになったとしても対象人数は限られる。

 内閣官房によれば、家計金融資産の6割超を60代以上が保有する。このため、高齢者に関して「所得だけでなく、保有資産も自己負担割合を決める算定基礎にすべきだ」との意見が少なくない。だが、これもハードルは高い。資産といっても預貯金や金融商品など換金性の高いものばかりではないためだ。多くは自宅の土地・建物である。不動産の場合、資産価値が変動しやすいという難点もある。むろん1000万円を超す現預金を保有する高齢者も少なくないが、その大半は公的年金の不足を補う老後資金としてコツコツと貯めてきたものだ。

家計金融資産の6割超を60代以上が保有(家計金融資産の世代別保有内訳)

家計金融資産の6割超を60代以上が保有(家計金融資産の世代別保有内訳)

 

貧困に苦しむ“将来の高齢者”をどう支援するか

 全世代型社会保障が一筋縄で行かない理由は他にもある。これから高齢者になる就職氷河期世代は、現在の高齢者より老後生活が厳しくなると見られていることだ。

 厚生労働白書によれば、2019年時点における35~44歳人口約1637万人のうち36.3%が無年金・低年金の予備軍だという。これらより少し上の世代も、長引く日本経済の低迷の影響でリストラされたり、勤務先が倒産したりして非正規雇用者となった人は少なくない。

 高齢者に負担増を求めるどころか、貧困に苦しむ“将来の高齢者”をどう支援し、その財源をどう確保するかということが「2040年問題」の主テーマなのである。

 そうでなくとも、少子高齢化や人口減少の加速に伴って新たな財源を必要とする社会保障上の課題が登場してきている。速すぎる出生数減を踏まえれば、子育て支援策はさらに手厚くせざるを得ないだろう。慢性的な人手不足や低所得者支援などにも多くの予算が必要となる見通しだ。

 現役世代への過度な「しわ寄せ」は是正すべきではある。だが、それを高齢者の負担増で行うことには無理がある。

 どの年齢層もゆとりのある人は多くはないのに、その中で世代間の負担の押し付け合いをしても根本解決にはつながらない。全世代型社会保障というのは最初から「計算の合わない話」であり、幻想なのである。

「既存の枠内で微修正」からの転換を

 まず知るべきは、社会保障というのはその国の経済力以上のことはできないという点である。日本の場合、人口減少によって人手が減り、経済的な陰りが生じてきている。それが社会保障を危機的な状況に追い込む根本原因となっているのである。こうした現実に目を閉じて、既存の社会保障制度の枠内で微修正を図っていても展望は開けないだろう。

 現状を打開し、社会保障制度の縮小を最低限で食い止めるには、最終的には人口が減っても力強く経済が成長する状況を作り出すしかない。逆に言うならば、経済成長を実現できなければ現行制度の大枠を維持できず、適用範囲の大幅縮小をはじめとして社会保障の姿を大きく変えざるを得なくなるということだ。

 企業の経営モデルのみならず、国民の消費行動を含めた社会構造の大転換が求められる。今後の社会保障改革は、日本経済の動向によって大きく変わってくる。

(了。前編から読む

【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。主な著書に、ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)のほか、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)などがある。

まいこめんと

60歳以上の高齢者の家計金融資産が半分を占めると言っても、その何割が高額な金融資産を
持っているかを示す図がないので片手落ちの政策だろう。

65歳以上の高齢者の窓口医療費の負担を政府が進めているようだが、そんなことをされたら
低所得にあえいでいる高齢者は一発で生活が苦しくなるだろう。

高齢者の医療費を2割上げたことで果たして社会保険財政は改善されるのか?
そもそも医療費が高いのは病院でかかる診療費が高いからです。
これまでも日本経済が失われた30年と言われながらも国民の総医療委は右肩上がりで
収入とは逆比例の状態にあります。
そもそもが医療費自体が経済発展と同じでないところに大きな問題点があります。
先だって政府は来年度の診療報酬改定で引き下げを答申しましたが医師会の猛反発に遭い
その動向が不透明になっています。

診療報酬は2割くらいカットしてもいいのではないかと思います。
それで潰れるなら潰れて淘汰された方がいいだろうと思います。

病院が減れば困るというのは風邪を引いただけで病院に行く国民の方がおかしいのです。
ちょっとした微熱程度の風邪ならば自分で市販薬を用いて治せるはずです。
風邪で行かないだけでも全体の国民医療費は3割は減り、社会保険料もそのままで維持
できるはずです。

要は国民の自己努力で医療費を下げることをすべきだろうと思います。

ただ、今のまま行けば窓口負担が増え、社会保険料も上がり、そのうち足りないと
言い出し、消費税を20%まで上げられます。そうなったらもはや生活維持が成り立たなく
なり、自殺者が増えるだろうと思われます。

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