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アメリカの小麦状況がさらに悪化。米農務省は「小麦作付面積は1919年以来最低となる」と発表

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小麦農場 食糧問題

アメリカの小麦状況がさらに悪化。米農務省は「小麦作付面積は1919年以来最低となる」と発表

しかも、そこにディーゼル危機が重なった場合はどうなるのか?

歴史的に低い収穫量となる可能性が高まる

以前、アメリカの農作状況が、主に干ばつと不安定な気候や気温(冬から春にかけて、極端な高温と極端な低温が繰り返された)、それと、肥料の高騰などによって、かなり悪い状況になっていることを以下の記事でご紹介しました。

…アメリカで歴史的な干ばつが起きており、今年の収穫量が壊滅的になることで飢餓を加速させるおそれ
In Deep 2026年4月28日

 

5月までの時点で、アメリカの冬小麦の作況状況は、「70%以上が収量損失のリスク」を抱えているという、かなり悪い状況となっています。

これらの現在のアメリカの農業の問題は、主に、干ばつと肥料不足となっているのですけれど、前回「棚が空になるまで8週間。飢餓まで60日」という記事を書いた時に、ふと思ったことがありました。

それは、

「ディーゼル燃料の問題」

です。

現在のアメリカはディーゼル燃料の価格が非常に高くなっていますけれど、価格の問題で済んでいるうちはいいとして、ディーゼル燃料が本格的な不足に陥った場合、どうなるのか? ということです。

前回ご紹介した記事に以下の部分がありました。

ディーゼル燃料が不足すると、トラックは動かなくなる。トラックが動かなくなると、農場から食料が集荷されなくなる。加工工場にも運ばれなくなる。配送センターにも運ばれなくなる。食料品店にも届かなくなる。 indeep.jp

そもそも、全部のトラクターかどうかは知らないですが、畑のトラクターなどもディーゼルで走るわけで、極端な燃料不足になった場合、

「農作業の継続自体が不可能になる」

という局面もないではないのかもしれません。

アメリカの冬小麦の収穫は一般的に 6月下旬から 7月下旬となっていて、昨日の記事の「タイムライン」(アメリカでは 7月のどこかの時点で石油が事実上枯渇する可能性)から考えますと、収穫の時期と重なることにもなります。

ただでさえ、干ばつや不安定な天候により作況が極めて悪い現状で、そこに燃料問題も重なってくると、相当厳しいことにもなり得ます。

もちろん、そのような場合、小麦だけの問題ではなく、あらゆる農作物への影響となるわけです。

そして、干ばつも日々悪化していて、最新の干ばつモニターでも「極度な干ばつ (赤以上で示される)」エリアがやや拡大しています。

2026年5月5日の干ばつ状況

droughtmonitor.unl.edu

 

また、今年は、スーパーエルニーニョが発生する可能性が高くなっていて、暑くなるのか寒くなるのか、あるいは雨が多いのか少ないのかは国や地域によって異なるとはいえ、「世界的に異常な気象となる確率がかなり高い」のです。

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米農務省は「過去107年で最低の小麦作付面積となる」と発表

このような中で、アメリカ農務省は、「今年の小麦作付面積は 1919年以来最低となる」と報告しています。以下は、農務省の報告からの抜粋です。

米国の小麦作付面積は1919年以来最低となる

3月31日、米国農務省農業統計局(NASS)は、2026/27年度の米国における全小麦作付面積に関する初の調査に基づく予測を発表した。全小麦作付面積は前年比 3%減と予測されており、5つの小麦品種すべてで減少が見込まれる。

今年の米国の小麦作付面積は、1919年の記録開始以来最低水準と予測されている。

長年にわたり、小麦が作付されていた多くの土地が、相対的な収益性と収量増加を理由にトウモロコシや大豆に転換されてきた。さらに、近年の主要作物の作付面積は概して減少傾向にあるため、小麦作付面積の一部はもはや畑作物として全く作付されない可能性もある。

今期の小麦の国内および世界的な供給過剰は、価格の低下と、来年度に向けた小麦作付意欲の低下につながっている。2025/26年度の米国の小麦期末在庫は 6年ぶりの高水準と予測されている一方、シーズン平均農場価格は 6年ぶりの安値と予測されている。

USDA

皮肉なことに「昨年のアメリカの小麦は豊作だった」ために、小麦の価格が非常に下落し続けまして、しかも、豊作だった昨年の在庫が大量にあるため、価格も上昇しにくいようです。そのため、農家の人々の小麦栽培に対しての意欲も低下しているようです。

直近やや価格は上昇していますが、2022年(ロシアのウクライナ侵攻時)の高値の半値くらいです。

過去10年間の小麦先物価格の推移

tradingeconomics.com

いずれにしましても、

・記録的な干ばつ

・不安定な気温と気候

に加えて、これはイラン戦争絡みですが、

・燃料不足の問題(農作、輸送の停滞)

・石油由来の製品(シートやその他いろいろ)の不足

・肥料の高騰と不足の問題

などにより、今年は混沌とした農業の状況になっていく可能性があります。

肥料に関しては、この春、アメリカのトウモロコシ農家の半数近くが肥料を確保できていないことも報じられていました。それに加えて、アメリカのトウモロコシの主要な収穫時期は、10月下旬から 11月で、その頃までに燃料不足問題が解決しているとはちょっと思えないということもあります。

いろいろ難題が積み上がるアメリカの農家ですが、アメリカの農作物の収穫不足の影響は、日本を直撃します

また、日本の飼料用のトウモロコシ等は、ほぼ海外、特にアメリカからの輸入ですが、そちらのほうも、どうも不安定な感じにもなっています。

ちなみに、現時点で、日本では「飼料用のコメが大幅に不足している」ことを農業新聞が報じていました。

2026年4月29日の農業新聞より

@triple_326

穀物から肉類にいたるまでの、多くの食材流通に危機が訪れる可能性があります。

そして何より、どんな食料でも「梱包やパッケージに入れないと出荷できない」ですからね。パッケージのほとんどは石油由来です。

アメリカの小麦の作況についての英ガーディアン紙の記事をご紹介して締めさせていただきます。

「小麦にとって最悪の時期」:米国の農家は猛暑と干ばつで損失に直面

‘The worst time for wheat’: US farmers face losses to extreme heat and drought
Guardian 2026/05/08

気温の急激な変化により、平原一帯の農作物は深刻な被害を受けており、一部の農家は収穫を断念している。

メリル・ニールセン氏がカンザス州中北部、サリナから西へ約 50マイルのところにある 2,500エーカーの農場に秋に植えた小麦は、11月の降雨量が例年より多かったおかげで、順調に育っているように見えた。しかし、異常に暖かく乾燥した冬と、それに続く極端な気温の変化が、生育中の小麦にストレスを与えた。

冬から春への移行期には、気温が 21~ 27℃まで上がる日もあれば、-10℃ から -7℃まで下がる日もあった

この不安定な天候がニールセン氏の作物を壊滅させた。今週、作物保険の査定員はニールセン氏に、彼の畑の収穫量はせいぜい 1エーカーあたり 2ブッシェル程度だろうと告げた。これは通常の 1エーカーあたり40~ 50ブッシェルという収穫量とは大きく異なる。「作物は全滅する」と彼は記者にメッセージを送り、わずかに育った小麦を収穫しないことを決めた。

ニールセン氏は約 50年間農業を営んでおり、曽祖父が 1871年に設立した農場で小麦、ソルガム、大豆、アルファルファを栽培している。彼は今年の作柄はここ数年で最悪の部類に入ると語っている。

彼だけがそう感じているわけではない。

中央部と南部の大平原の農家は、国内のパン用小麦である硬質赤冬小麦の大部分を栽培している。冬に備えて根を張らせるため、秋に種をまき、夏の暑さが本格化する前に成長を始める。カンザス州は米国最大の生産地であり、オクラホマ州、テキサス州、コロラド州、ネブラスカ州も主要な生産地だ。

数字はニールセン氏の観察を裏付けており、カンザス州とオクラホマ州では 2025年3月から 2026年3月にかけて、過去 2番目に暖かい年となった。

テキサス在住の気象学者、シェル・ウィンクリー氏によると、3月の気温は平年より 10~ 11°F (華氏)高かったという。カンザス州では史上 3番目に暖かい 3月となり、オクラホマ州では記録的な暖かさとなり、干ばつ状態がさらに深刻化した。

平原地域における今年の冬小麦の作柄は、近年稀に見るほど悪く、干ばつに見舞われた 2023年に匹敵するほどだ。米国農務省傘下の機関が発表した週報によると、カンザス州の小麦の 44%、オクラホマ州の小麦の 49%が極めて不良〜不良と評価されており、他の地域でも同様の評価となっている

カンザス州中北部と北西部の農家は今シーズン大きな打撃を受けており、カンザス州立大学の小麦・飼料生産学教授であるロムロ・ロラート氏は、この地域の被災農家がニールセン氏の収穫中止の決定に倣う可能性があると予想している。

カンザス州の他の農家はやや状況が良いものの、収穫量の減少は避けられないだろう。ローレンス近郊のカンザス州北東部で 5代続く農家であるベン・パレン氏は、1万5000エーカーの農地でトウモロコシ、ヒマワリ、キビ、ソルガム、有機小麦を栽培している。彼の収穫量は例年の 30%程度にとどまるかもしれない。彼は今年の収穫量の見積もりを待っているところだ。

カンザス州南西部のレーン郡で 1万1000エーカーの農地を耕作するヴァンス・エムケ氏は、1月初旬に 32℃の高温を経験した後、氷点下の寒さに見舞われた。4月下旬、ようやく干ばつに苦しむ作物に雨が降ったが、それは 2.5センチにも満たない雨だった。

6月上旬に収穫が始まるまで、作物が水分の恩恵を受ける時間はまだあるが、5月から 7月にかけての長期予報では、カンザス州とネブラスカ州では降雨量が平年を下回ると予測されていると気象学者のウィンクリー氏は述べている。

小麦は降雨量が少なくても生育が良くなるため、収穫前の収量や作付面積を正確に予測するのは難しい。しかし、小麦の専門家は、作付面積の減少と作付け放棄の可能性が重なり、米国の小麦総生産量は減少すると予測している。米国農務省は今年初め、米国の小麦作付面積が 1919年以来最低になるとの見通しを示した

現状を踏まえると、小麦・飼料生産学教授ロラート氏は今年のカンザス州の小麦生産量は 2億~ 2億2000万ブッシェル程度にとどまると予測しており、これはカンザス小麦協会が発表した過去 10年間の平均生産量 3億 1700万ブッシェルをはるかに下回る。

干ばつに見舞われた 2023年には、カンザス州の収穫量は 2億100万ブッシェルにとどまり、作付け面積の 29%が未収穫となった。これは 1951年以来最悪の数字である。

カンザス州立大学の准教授であるグレッグ・イベンダール氏は、作物の状態評価、収穫可能な面積、収量予測を用いて、米国の小麦総生産量は昨年比で 15%減少すると予測している。

しかし、今年の小麦の収穫量は確かに少ないかもしれないが、昨年の豊作のおかげで、米国では小麦が不足することはないだろう。今のところは、十分な供給量がある。


 

ここまでです。

「米国では小麦が不足することはないだろう」とありますが、小麦そのものは不足していなくとも、ディーゼル燃料がないと、誰もそれを出荷・運送することができません。

タイムリミットは最短の場合、およそ、あと 2カ月後です。

 

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