イランが米国との協議を放棄し、「2つの重要航路を完全に封鎖する」という計画を述べる。
仮にそうなった場合、来年の終わりまでの人命の損失と文明の崩壊度合いはどのようになるのか
ホルムズ海峡の完全閉鎖と、さらにバブ・エル・マンデブ海峡の閉鎖が実施されるとき
今朝、「イラン、米との協議停止」という日本語のいろいろなメディア報道がなされていました(リンクはCNN)。
結局、どの引用元もイランの準政府系通信社であるタスニム通信の報道からのものですが、その報道が出た途端に、米国原油価格が 8%以上急騰したりしていて、相変わらず不安定な市場も続いています。
しかし、タスニム通信のその報道で気になったのは、
「ホルムズ海峡を完全に封鎖し、バブ・エル・マンデブ海峡を含む他の戦線を活性化する計画を策定した」
と述べていることでした。
つまり「バブ・エル・マンデブ海峡も閉鎖する」方向で動き始めているということです。
バブ・エル・マンデブ海峡は、ホルムズ海峡と並んで、この地域の重要な航路で、スエズ運河への重要な玄関口となっています。
ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡
vietnam.vn
ホルムズ海峡閉鎖の後も、このバブ・エル・マンデブ海峡を通じて、サウジアラビアの石油などが輸出されていましたが、仮にここをイランが封鎖した場合、これまで以上に、中東からの石油等は来なくなります。
タスニム通信のその部分を報じていた報道をまずご紹介します。
イラン、米国との協議を中断し、ホルムズ海峡の全面封鎖を警告
Iran halts talks with US, threatens full closure of Strait of Hormuz
IDN 2026/06/02
イランは米国との通信を遮断し、ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡の封鎖をちらつかせた。
イランは仲介者を通じた米国とのメッセージのやり取りを停止し、ホルムズ海峡を封鎖する措置を検討していると、タスニム通信が月曜日(1月6日)に報じた。
ロイター通信の報道によると、この決定は、イランと米国およびイスラエル主導の連合軍との間で 3カ月に及ぶ戦争を終結させるための外交努力が続けられている中で下された。
タスニム通信は、イランがイエメン、レバノン、イラクのシーア派同盟国を含む抵抗戦線と協力し、ホルムズ海峡を完全に封鎖し、バブ・エル・マンデブ海峡を含む他の戦線を活性化する計画を策定したと報じた。
この動きは、イスラエルとその支援国を「罰する」ための試みだとされている。
イエメンのフーシ派が紛争の新たな戦線を開いた場合、影響を受ける可能性が高い主要な標的の一つは、イエメン沿岸近くの戦略的な航路であり、スエズ運河への重要な玄関口となっているバブ・エル・マンデブ海峡だろう。
イランのアッバス・アラグチ外相は、ある地域での停戦違反は、紛争戦線全体における違反とみなされるべきだと述べた。
X に投稿された声明の中で、外相はレバノンにおけるイスラエル軍の作戦に言及し、いかなる違反行為の結果についても米国とイスラエルが責任を負うことになると述べた。
2月28日に始まったこの戦争は、米国とイスラエルが関与しており、特にイランとレバノンで数千人の命を奪った。
この紛争は、イランが石油と液化天然ガスの輸送にとって世界で最も重要な航路の一つであるホルムズ海峡を事実上封鎖したことでエネルギー価格が高騰し、世界経済の混乱も引き起こした。
タスニム通信は、イラン当局者と交渉担当者が、ガザ地区とレバノンにおけるイスラエル軍の作戦の即時停止、およびレバノンの占領地域からのイスラエル軍の完全撤退を要求していると付け加えた。
通信社によると、イランと抵抗勢力の要求が満たされるまで、これ以上の協議は行われないという。
ここまでです。
現状でも、石油にしても、その派生製品にしても、あるいは肥料にしても全然足りていないのです。
日本では、政府などが「すべて足りている」と言っていますが、まあ、じゃあ、「なぜか日本だけは全然足りている」という魔法が存在するとして、日本がどうだろうが、
「主要国全体が、もうじき限界に達する」
のです。
以下は、JP モルガンによる計算で、詳しいところは、少し前の「JPモルガンや国際エネルギー機関などの分析では「石油の流通が完全に停止する」のは今年9月」という記事にありますが、6月には危機的になり、9月には「操業レベルとしての事実的な枯渇」(底が見える)ラインに達するのです。
石油の供給停止が起きるまでのタイムライン(JPモルガン)
DropSiteNews
こちらの記事には、以下のようにあります。
> アメリカ合衆国は 2026年7月4日までに使用可能な石油が枯渇すると予測されている。ヨーロッパは今月中に枯渇する。
「ヨーロッパは今月中に」とありますが、これは 5月に書いた記事ですので、ヨーロッパは、完全に枯渇はしていないにしても、限りなく枯渇に近づいている可能性があるのです。
正確には、5月の終わり頃に枯渇に近づいた可能性があります。
というのも、「 EU 諸国は法的に最低 90日分の輸入に相当する緊急石油備蓄を維持する」ことが法律で義務づけられています(DW)。
そして、現在、「ホルムズ海峡閉鎖から 95日が経過した」ので、ヨーロッパ諸国の備蓄は少しずつ枯渇に近づいているはずです。
アメリカも、戦略石油備蓄が過去最大の急減を見せていて、操業最低ラインに少しずつ近づいています。
戦略石油備蓄の在庫増減の推移(2024年11月〜)
zerohedge.com
もちろん日本の原油在庫量も過去最大レベルで急減していますが、日本の政府によれば「大丈夫」ということですので、奇跡か魔法が存在しているのかもしれません。
日本の原油在庫量の過去5年との比較
Rory Johnston
これで、タスニム通信が述べていたように、「今後、イランがホルムズ海峡を再び完全に閉鎖」して、さらには「バブ・エル・マンデブ海峡も閉鎖する」というようなことが起きると、どうなっちゃうのかなあと思った次第です。
世界の原油在庫はどうなっているのかを見てみます。
現在、膨大な石油備蓄は中国にしか残っていないという事実
世界には、石油の大きな産地、あるいは輸入している国々はいろいろとありますけれど、産地のひとつであるロシアでさえ、度重なるウクライナからのエネルギー施設攻撃により「6月1日からジェット燃料の輸出を全面的に禁止 (報道)」ということになっています。ロシア史上初めてのことです。
世界最大の石油産出国であるアメリカは先ほどの通り、戦略備蓄を減少させ続けています。
「どこに石油は残っている?」
と考えざるを得ないですが、まあ……8月など夏になれば、いろいろとはっきりとしてくるのでしょうね。
よく「詰む」という言葉が使われますが、詰むという曖昧な表現より「社会が死に至る」のです。
あるいは、石油関係ではなく、肥料のほうでも、国連は、肥料の流通不足の深刻化は「世界に数年に及ぶ食糧危機を招く恐れがある」と述べています。数年、と述べています。
そして、現実としては、主要国で石油備蓄を積み増し続けているのは、中国だけのようです。
もともと、中国は世界最大の戦略石油備蓄を持つ国で、2位が米国、3位が日本、4位がヨーロッパでした。
この中で、アメリカと日本、そしてヨーロッパの現状は先ほど書いた通りに急減し続けていますが、中国は以下のロイター報道にある通り、「イラン戦争後も増やし続けている」のです。
中国はイラン危機にもかかわらず、4月も原油備蓄を積み増し続けた
Reuters 2026/05/21
中国は4月、原油輸入量が約4年ぶりの低水準に落ち込んだにもかかわらず、原油備蓄を大規模に積み増し続けた。
中国の原油余剰量は4月に日量約43万バレルに達した。輸入量が20%減少したにもかかわらず、製油所の処理量が2022年8月以来の最低水準に落ち込んだためだ。
世界最大の原油輸入国である中国が在庫を積み増し続けていることは、ホルムズ海峡の事実上の閉鎖によって約1200万バレル/日の供給が失われたことを補うために石油備蓄を消費している世界の他の国々とは全く異なる状況にあることを示している。
驚くことに、中国は石油を放出するのではなく、逆に「使用量を低下させる」ことで、石油の備蓄をさらに積み増しているようです。景気や経済にはよくないのでしょうが、サバイバルとしては優秀だと思わざるを得ません。
とにかく、まともな量の原油は今は中国にしかない状況のようです。
かといって、日本と中国の関係は過去最低であり、日本が困って何かをしてくれるということもないでしょう。
しかし、日本とヨーロッパはどこかの国や地域に頭を下げない限り、来年にはバタバタと人も社会も死んでいくことになってしまいます。
それを避けられる魔法があればいいのですが、現実社会には奇跡や魔法はあまり起こりません。






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