「消費減税は必要ないのか?」実質賃金2か月連続プラスで「物価を上回る賃上げ実現」の発表に潜む“詐術”
政府は実質賃金を高く見せるべく統計の計算方法を突然変更していた。統計をいじればいくらでもデータを良く見せられる。
高市自民党が圧勝した総選挙の公約に掲げていた「食品の消費税ゼロ」。物価高が日本を襲うなか、すぐにも実現に向けた動きが進むものと思っていたら、そうなっていない。代わりに与党内で突如として浮上したのが「消費税1%」案だ。不可解な経過を辿る議論の裏側を探ると、そこには財務省を核とする“増税マフィア”の策謀がめぐらされていた。
政府が目指す「物価を上回る賃上げ」が実現?
消費減税の議論が遅々として進まぬなかで気になる統計が発表(4月23日)された。厚労省は物価高でこれまで4年間下がり続けていた実質賃金が2か月連続(今年1月分と2月分)でプラスになったと発表。1月の実質賃金はプラス0.7%、2月はプラス1.9%で、政府が目指す「物価を上回る賃上げ」が実現しているという発表だ。
それに加えて今年の春闘の平均賃上げ率は5.08%(連合第4次集計)で3年連続の5%超えと宣伝されている。
減税反対派の財務省にすれば、「物価を上回る賃上げが行なわれているのであれば、物価対策の消費税減税は必要ない」と政界に根回しする格好の口実だろう。
案の定、「賃金上昇率が物価上昇率を安定的に2%上回るまで消費税率を一律5%に引き下げる」と主張していた国民民主党の玉木雄一郎・代表はこうした賃上げの流れを受けて、「(政策を)最新のものに見直していく」と消費税減税の政策見直しを表明した。
実質賃金を高く見せるように統計方法を変更
だが、いくら実質賃金がプラスになったと言われても、国民には賃上げで生活が楽になったという実感は薄い。この4月も2798品目が値上げされ、むしろ生活は苦しくなる一方だ。
それなのになぜ、「物価を上回る賃上げ」が実現しているという統計になるのか。そこにはカラクリがあった。
政府が実質賃金を高く見せるように統計方法の変更を行なっていたのだ。
「実質賃金」は会社員の「平均賃金月額(※厚労省「毎月勤労統計調査」の1人あたり現金給与総額)」を「物価上昇率(消費者物価指数)」で割って計算する。
分母にあたる「物価上昇率」を低く抑えられれば、割り算で算出される実質賃金の額は増えるわけだが、政府は昨年4月に計算に採用する指標を変更。複数種類ある物価指数のうち、より低い上昇率となる指標を用いて計算するようにしたのだ。
もともと、実質賃金の計算には長い間、「持ち家の帰属家賃を除く総合」という物価指数が使われてきた。帰属家賃とは、持ち家の人が自分に家賃を払っていると仮定して試算した架空の金額で、この帰属家賃は20年余りほぼ上昇していない。
そのため、帰属家賃を除く物価指数は、一般的に用いられる「総合指数」より高い。厚労省の資料でも、この指標を採用することにより、実質賃金の指標が「労働者の実感に即したもの」になると説明してきた。
にもかかわらず、政府は「国際基準に合わせる」という理由でその計算方法を突然変更した。新たに採用されたのは「総合指数」で、従来の「持ち家の帰属家賃を除く総合」よりも低い水準の指標である(現在は新旧の計算を併記)。低い物価上昇率での計算に変更することで、実質賃金は大きくなるわけだ。
計算方式の変更で昨年の実質賃金上昇率(年間平均)は、従来計算方式に比べて0.5ポイントも上昇した(マイナス1.3%→マイナス0.8%)。新旧の計算方式で平均賃金は変わらないため、統計変更による「実質賃金の嵩増し」である。
厚労省は「ご指摘のようになるということは、承知しています」
政府の物価統計に疑問を呈してきたエコノミストの斎藤満氏(元三和証券調査部長)が語る。
「政府は賃上げを公約しているのに、物価高が賃上げを上回って実質賃金のマイナスが続き、批判を浴びてきた。そこでなんとか統計上の物価上昇を抑え、実質賃金を大きく見せたい。そこで意図的に実質賃金が嵩上げされるような指標の変更を行なったと見るべきでしょう。
国際比較をしやすいようにという変更理由もおかしい。欧米の帰属家賃は物価に連動している部分があるため含めても物価指数に影響はないが、日本の帰属家賃は20年余りほとんど上昇していないから、それを含めた総合物価指数は低めの数字になる。そうした各国の事情を考えずに形式上だけ指標を欧米に合わせた結果、日本だけ経済の実態と乖離の大きい物価指標を使うことになる。それでは正確な比較にならないのではないか」
そうした実質賃金嵩上げの布石がここにきて実質賃金プラスとなる効果をあげた。
「今年1~2月分に実質賃金がプラスになったのは昨年前半の異常な物価高の反動や電気・ガス代の補助再開で物価上昇がやや抑えられたことと、統計の指標変更の相乗効果でしょう。今後、イラン問題の影響で物価がさらに上がってくると、指標変更がもっと効いてくる。物価上昇はより低めの数字になり、実質賃金はより大きく上がっているような数字が出るはずです」(斎藤氏)
こんな統計で「物価を上回る賃上げ」と言えるのか。厚労省に聞くと、「経済財政諮問会議で実質賃金について、国際比較が必要との意見が出たことをきっかけとして、帰属家賃を除く『総合』と含む『総合』を出すことにしました。インフレ局面では(実態より実質賃金が高く見えるという)ご指摘のようになるということは、承知しています」(雇用賃金福祉統計室)と答えた。
だが、物価統計のウソはそれだけではない。つづく第3回記事では、政府発表の数字に隠された、実際の物価上昇よりも低く見せるための仕組みについてレポートする。
「冷蔵庫の値段は30分の1、ノートPCは69分の1に?」消費減税つぶしのために物価上昇を隠蔽する政府発表統計のカラクリ 機能向上など付加価値上昇分で統計上の価格に反映する計算
高市自民党が圧勝した総選挙の公約に掲げていた「食品の消費税ゼロ」。物価高が日本を襲うなか、すぐにも実現に向けた動きが進むものと思っていたら、そうなっていない。代わりに与党内で突如として浮上したのが「消費税1%」案だ。不可解な経過を辿る議論の裏側を探ると、そこには財務省を核とする“増税マフィア”の策謀がめぐらされていた。【全3回の第3回】
冷蔵庫の値段が30分の1、テレビは10分の1に
政府は実質賃金を高く見せるように統計方法の変更を行なっていたが、物価統計のウソはそれだけではない。物価統計(消費者物価指数)は年金の支給額や公共料金の算定から、日銀の金利にまで関わる最重要指標の一つだが、政府発表の数字には実際の物価上昇より低く見せる様々な仕組みがある。
掲載のリストを見ていただきたい。
厚労省の物価統計から、主な耐久消費財の物価を1990年(または統計採用年)と2025年で比較した。
それによると、冷蔵庫の価格は30分の1、テレビ、洗濯機、ゲーム機は10分の1、ノートパソコンに至っては2000年の69分の1の価格に値下がりしたことになっている。
調査品目の冷蔵庫は「5ドアタイプ」が対象だが、現在、ネット通販サイトを見ると1台13万~20万円程度で売られている。それが1990年当時は30倍の値段だったというなら、400万~500万円程度だったことになるが、そんなはずはない。
原因はこれも物価統計の計算方法にある。
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マイコメント
実に姑息なやり方ですね。
国民を騙すためには嘘をついても構わないという精神構造だということです。
これだから、政府の「ナフサはある」と言う言葉を素直に信じられないということです。
要するに民間の給与は上がっているのだから、消費税を下げて国民生活を助ける必要は
ないという論理です。まさに財務省が描いたシナリオなんでしょう。




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