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《自動車パーツの受注が20分の1に…》ナフサ・ショックで塗装工場社長が悲鳴

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政府の発言と現場の声に大きなズレ エネルギー

《自動車パーツの受注が20分の1に…》ナフサ・ショックで塗装工場社長が悲鳴

「材料がないと仕事ができない」「覚悟はしていたが、想像と桁が違う」

「シンナー、アルコール、硬化剤、グリス、マスキングテープ、ペーパー(紙やすり)……。ゴム手袋なんかも含めると、ナフサ由来の材料で仕事で必要なものは本当に数が多い。これらがどれも入手しにくくなっているのが現状です」──群馬で塗装工場を営む男性はそう言って苦悶の表情を浮かべた。

 中東情勢の影響で、石油化学製品の原料となるナフサの供給不安が広がっている。高市早苗首相や経産省などは国内での供給量について「見通しはたっている」といった姿勢で、5月13日には日本商工会議所の小林健会頭も「政府が石油備蓄や代替調達先の対応をしているので(必要分は)足りている」と応じた。

 しかし現場では実に多くの悲鳴が上がっている。この乖離は何なのだろうか──。【前後編の前編】

 ナフサは原油を蒸留して抽出される液体で、様々な石油化学製品の原料となる。プラスチックに限らず、これまで流通に支障が出ているという報道のあったシンナーや断熱材、医療用ゴム手袋、先日話題になったばかりのカルビーのポテトチップスのパッケージに使用する印刷用インクといった幅広い用途で使われている。

「ナフサ由来の化学製品の供給は、これまでの半年以上から、さらに延び、年を越えて継続できる見込みだ」

 4月30日、高市首相が中東情勢を受けた関係閣僚会議でこう発言している。同日、経産省もナフサについて5月は中東以外からの調達量が、戦闘が始まる前の3倍に達する、などとも発表。国としてはナフサは不足していないというスタンスを維持している。

 しかし、その姿勢に疑問視する声が多いのも事実だ。

「国内で使用されているナフサの4割が中東産。国内で精製している分も約4割あるとされていますが、その元となる原油もやはり中東産です。ホルムズ海峡の航行がままならない状況で、中東情勢が悪化する前とは流通の状況が大きく異なっているのは間違いないでしょう。

 もちろん政府は公式発表しているように対応していると思いますが、それが現場の津々浦々にまでは浸透しておらず、平時の流通とは程遠いものになっているのが現状だと思います」(全国紙政治部記者)

 実際に街場ではすでに大きな影響が出ている。群馬県南部で塗装業の会社を経営する30代のIさん(仮名)は、冒頭のように中東情勢の影響のあまりの大きさにショックを受けている。

Iさんの会社は大手自動車メーカーの孫請けとして自動車の車体の一部の部品を塗装して納品している

Iさんの会社は大手自動車メーカーの孫請けとして自動車の車体の一部の部品を塗装して納品している

「すべての製造業に言えますが、ナフサ由来の材料なくては成り立ちません。4月以降、いつもの商社さんに材料を注文しても買えないことも多い。中東情勢の影響で、仕事自体の受注も激減していて……。そこは営業努力で頑張るとしても、材料がないとそもそも塗装ができなくなってしまいます」

 Iさんの会社の従業員は約20人。大手自動車メーカーの孫請けとして自動車の車体の一部の部品を塗装して納品している。大きさや形状によって左右するが、月間でパーツ数にすると約3000個を処理する能力があるという。

「うちの会社の強みは親父の代から一緒に仕事をしている塗装師を筆頭に、全て手作業で行っていることです。機械化している大きな工場と比べて、納品数はどうしても少なくなりますが、小回りが効くので、少し特殊な色などメーカーのニッチなニーズにも対応できます」(同前)

 中東情勢の影響は「アメリカの攻撃が始まった時点で多少のダメージは覚悟はしましたが、想像と桁が違った」と肩を落とす。

「ある大手自動車会社の人気車種がマイナーチェンジして、その部品を月に1000個レベルで受注する予定だったんです。これは表裏の塗装が必要なので実質2倍の2000個ほどの仕事量になる。私たちにとってはとても大きな受注です。3か月先まで“内示”といって発注予定数が“親”(元請け会社)から送られてくるのですが、1、2月は内示通りに1000個以上の塗装を行いました。

 3月は当初1480個だった内示数が結果的に600個まで減った。これはまずいなと思っていたら、4月は始まる1週間前に突然50個になって、5月も50個です」(同前)

 20分の1に激減した受注数。原因は中東情勢の悪化だ。

「日本の自動車メーカーが中東方面に向けて、完成した自動車を輸送できなくなった。すると在庫ばかりが増えるので、新しい車を作れなくなって減産なんてことも報じられていますね。それに伴い、私たちの発注も激減したわけです」(同前)

 直接売り上げに響く受注減は相当なダメージだが、それ以上に危機的状況なのがシンナーなどのナフサ由来の材料が入手困難になっていることだという。

 その影響は凄まじく、Iさんは「コロナの時がかわいく思えてしまいます」と嘆くのだ──。

(つづきを読む)

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