スラエルやアメリカの新イスラエル派はこうしたイランへの譲歩を潰そうとしている。イラン側にも、自分たちの指導者を騙し討ちしたアメリカやイスラエルとの停戦合意に反発している人も少なくない。
アメリカとイスラエルがイランを騙し討ちし、イランの最高指導者を務めていたアヤトラ・アリ・ハメネイ師らを殺害して始まった戦争の終結を目指す合意を文書化するため、6月19日にジュネーブで署名式を開く予定だと伝えられている。
ドナルド・トランプ米大統領によると、この交渉でロシアのウラジミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席が重要な役割を果たしたという。アメリカは中央アジアの制圧を虎視眈々と狙い、カフカスの政府はイスラエルが影響下に置いている。そうした状態の中、イランでの戦乱が拡大、アメリカの配下に入ることをロシアや中国は阻止したいはずだ。
アメリカとの交渉団で戦略顧問を務めるメフディ・モハマディによると、第1にイランとレバノンへの攻撃は全面的に停止され、戦闘の再開を防ぐためのメカニズムが設けられる。第2にイランの凍結資産の一部が解除され、アメリカは特定の制裁を緩和する。第3にイランの船舶に対する制裁を緩和し、海上貿易と国際輸送ルートを正常化する。第4に核問題は初期段階の協議には含まれず、合意の第一段階が完了した後に取り上げる。最終段階でアメリカは制裁を解除し、戦争および経済的損害に対する賠償と復興支援について協議する。
核兵器を保有しないことを国の方針としてきたイランにとって核兵器保有放棄の誓約は問題ないとして、レバノンに対する攻撃の停止をイスラエルが守るだろうかという疑問がまず生じる。6月14日にイスラエルがベイルート南郊を爆撃、イランは報復攻撃の準備を始めたが、トランプ大統領は「賄賂」を提示、攻撃を思いとどまらせたという。
また、アメリカが凍結したイランの資産240億ドルを60日間の交渉期間中に返還することが求められ、そのうち120億ドルは交渉が始まる前にイランへ返されるとされているのだが、アメリカ政府の内部からは、交渉開始前に120億ドルの凍結資産を無条件で受け取るという主張を否定する声が聞こえてくる。120億ドルはイランを従わせるための餌にすぎないと言うことだ。アメリカがイランの内政に干渉しないという約束も求められているが、内政干渉はアメリカの常套手段。ホルムズ海峡を再開する場合、その仕組みをどうするかも不明確だ。
トランプ大統領を窮地に追い込んだ最大の理由はイランとの戦争に負けたということだが、そこからアメリカが保有する原油の在庫減少という問題も生じている。この問題はアメリカのニューズウィーク誌も報じている。
EIA(エネルギー情報局)が公表した最新統計によると、5月15日までの1週間で原油在庫は1780万バレル減少、その結果、戦略石油備蓄(SPR)を含む総貯蔵量はほぼ1年ぶりの低水準まで落ち込んだと指摘している。夏には東アジアや欧州諸国で「在庫が底をつく」状態となるため、アメリカからの輸入需要がさらに高まり、在庫の減少が一段と加速するともしていた。
日本では備蓄石油にほとんど手をつけていないとも言われているが、アメリカでは「在庫取り崩しはこれまで緩衝材として機能し、原油価格のさらなる急騰を防いできた」という。
アメリカによるSPR放出が原油価格を下げていたのだが、「この夏に在庫が運用上の最低水準まで低下し、緊急時の放出をする余裕がなくなれば、その緩衝効果は失われる」と5月下旬には懸念されていた。ホルムズ海峡の開放は緊急を要す事態だったのだ。
アメリカで備蓄されている石油の枯渇もトランプにイランの要求を受け入れさせる圧力になっているのだろうが、イスラエルやアメリカの新イスラエル派はこうしたイランへの譲歩を潰そうとしている。イラン側にも、自分たちの指導者を騙し討ちしたアメリカやイスラエルとの停戦合意に反発している人も少なくない。イランの経済を握っている勢力は米英の金融機関と繋がっているが、庶民は違う。
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