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今や100万人に迫る在日中国人、富裕層だけじゃない“爆増”の歴史的必然、人口減少の日本社会は耐えられるか

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在日中国人の増加 未分類

今や100万人に迫る在日中国人、富裕層だけじゃない“爆増”の歴史的必然、人口減少の日本社会は耐えられるか

日本に住む中国人が目立って増えている。日中関係が決して良好とはいえない中、なぜ多くの中国人が日本を“目指す”のか。日本は、増え続ける在日中国人とどう向き合うべきなのか。この動きを最前線で追ったドキュメント、『潤日-日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』著者の舛友雄大氏と、日中間の“密貿易”に従事した「海賊」の実態を描いて中国と周辺諸国の関係史を考察した近著『倭寇とは何か』が話題の岡本隆司・早稲田大学教授に語ってもらった。
※記事の内容は東洋経済の解説動画『増える在日中国人”100万人”時代』から一部を抜粋・補筆したものです。外部配信先では動画を視聴できない場合があるため、東洋経済オンライン内、または東洋経済オンラインのYouTubeでご覧ください。

中国人は世界中で増えている。

中国人が日本にやってくる3つの理由

ーー在日中国人の数は2024年末で87万人となり、前年より5万人増えました。100万人に達する日も遠くないといわれています。

舛友:この動きは「潤日」と呼ばれ、2022年の上海ロックダウン以降、鮮明になってきたと思います。

「潤」はもともと「儲ける」という意味ですが、中国語のピンイン表記で「run」と書くことから、英語の「逃げる」と関連づけられ、より良い暮らしを求めて中国から海外へ移住する人々のことを指す言葉として使われるようになりました。階層的には、超富裕層、アッパーミドル、そして中間層と分かれています。

それ以前の新華僑は、福建省とか上海、東北三省から留学生とか技能実習のかたちで来た人が多いと思います。今やってきてる「潤日」の人たちは、中国の大都市に住んでいた人が主体で、職業的に言うと、起業家、エンジニアなどの専門職、それ以外にアーティスト、知識人が結構目立つようになっていますね。この人たちの特徴の一つはグローバルな視野を持っていることで、比較検討のうえで日本を選んでいる印象です。

日本に来る理由で一番大きいのは中国の国内の状況が悪化しているということです。政治的、経済的、社会的、さまざまな方面で中国の状況が悪化しているのを受けて逃げ出すという動きです。

具体的には大きく3つの理由があると思っています。

まずは資産の保全。これは日本でのタワーマンション爆買いなどにつながっています。次に良好な教育環境を求めて。中国では受験戦争がどんどん激化しており、一方では政治的な思想教育も強化されているので、それを嫌っているということです。あとは表現、言論の自由を求めているということです。

ーーこれまでと違って、日本の中に中国人社会が形成されつつあるという印象もあります。歴史的にはどう位置づけられますか。

岡本:この現象そのものが何か日本にとって新しいだとか、あるいは中国で今までなかった動きなのかと言われると、おそらくそれは違います。

中国大陸の統治体制に満足できない人が海外に出ていくという動きは歴史上、繰り返されてきました。それこそ拙著『倭寇とは何か』で書いたように、16世紀の「後期倭寇」と呼ばれる現象はその代表例ですし、そういうことがある一定の周期で、あるいは波状的に起こってきたのが東アジアなり中国なりの歴史です。世界各地のチャイナタウンだとか華僑のコミュニティだとかは、そうやってできあがってきたものです。

いまや中国の人たちも本当にグローバルに動いています。日本に今起こっている現象はその一端、あるいはそのなかで最も大きな動きなのかもしれないですが、われわれの立ち位置も、歴史的にないしは地球規模の視点から考えたほうがいいと感じています。

現在の動きに近いのは「倭寇」の時代

ーー大陸の中での経済とか社会の大きな変動があると、それが人の流れという形で周辺の国々にも影響するということが繰り返されてきたわけですね。それが今、日本に向かっているのはなぜでしょう。

舛友:圧倒的に大きいのはコスパだと思います。いま中国から脱出したい人には先進国志向が強いのですが、そんな中でも日本は生活のクオリティが高いことが知られています。一方で欧米諸国と比べて、生活コストがすごく低いっていうのも目立つところです。

以前であればアメリカがやっぱり一番いいという感覚があったと思うんですが、トランプ政権がまた誕生してアメリカが不安定になり、米中対立も深刻化しています。そんな中で日本は安心安全な国というイメージが定着しているというところもあると思います。もう一つ付け加えると、日本では長期滞在ビザが取りやすいというのもあります。


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岡本:ビジネスチャンスがあちこちに生まれているのに、中国国内の政策はそういう動きに必ずしも順応できない。そうなれば富裕層は国外にビジネスチャンスなり、あるいは自分たちの安全の地を求めて出ていきます。まさに習近平政権が直面している状況ですが、これもやはり、ずっと中国の歴史のなかで繰り返されてきたことなのです。

政府にとっては、富裕層とか知識人が国外に逃げざるをえないほど思想統制を強めたり、経済を犠牲にしてでも内政を締め付けたりせざるをえない状況が生まれているということでしょう。現状に一番近いのは、先にも申し上げた「倭寇」の時代、16世紀あたりかなという印象ですね。

そのあとに明から清への王朝交代があり、江戸時代に日本は中国からの人の流れをシャットアウトしました。ところが明治維新後の19世紀末には、清朝政府と対立する中国の革命勢力が日本に流れ込み、東京を舞台にさかんに革命運動が行われました。こうした経緯があるので、いまの「潤日」の動きについても、中国の中央政府としては、いつ反体制に転ずるか、心穏やかではいられないでしょう。


ーー日本に今来ている中国人の中でも、大陸の体制への距離感はさまざまでは。


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舛友:「潤日」の人たちの中で堂々と反中国政府的な言動をする人は割と少数なんじゃないかなと思っています。大陸と往来して暮らしていたり、家族を残してきている人も多いので、そのあたりはかなり気をつけているという感じがしますね。

岡本:華僑が海外のチャイナタウンで暮らしていても、亡くなったら故郷の墓に葬るため棺桶で送るネットワークがあるというのは歴史上非常に有名な話なんです。

そういうのは彼らのコミュニティの中ですべてやるわけですよね。ですのでその大陸・故郷とのつながりは切れません。そういう風習などを維持していくため、あるいは暮らしを守っていくため自分たちのコミュニティっていうのはどうしても必要になる。

日本の中に、日本人があまり立ち入れないような中国人コミュニティができあがっていくっていうのも、やはり歴史上で繰り返されてきたことです。そこで定着をしていけば、最終的には今の中華街みたいなものになるかもしれない。現段階では、まだわからないですね。

中国サイドの事情を正しく理解する必要性

ーー日本社会は同化力がけっこう高くて、これまでもいろんな移住者の波を消化してきた歴史があると思いますが、100万人もの中国人を人口減少社会の日本が受け入れられるでしょうか。

舛友:最近やってきている「潤日」の人は日本語があまり上手でないことも多いです。そもそも日本で生活したことがないので、日本の慣習とかルールが見えていない。2世代目以降の変化に注目したいと思います

岡本:人口減少だったり高齢化だったり、そういうことに加えて、中国に対する印象とか感情というのが、非常に今の日本社会ではよくない。昔は中国をリスペクトする人が多かったが、今はほとんどそういう意識がない。また好悪はともかく、中国に対する造詣の深い人も減少の一途です。

さらに日本社会自体が収縮しているというような状況もある。今その中にあって、なぜ中国人が日本にやってくるのか、彼らは日本に何を期待しているのか。彼らを積極的に受け容れるにせよ、一定の制限をかけるにせよ、日本人はもっとこの状況をしっかり理解しておかないとまずいんじゃないかと思います。


舛友:地方では生徒の確保が難しい高校などが中国からの留学生を受け入れていく動きが見られます。また、注目すべき動きとしては在日中国人で議員を目指す人が結構増えていまして、その背景には地方だと議員のなり手がいない、もう地方自治が成り立たなくなっているという実情があります。いずれも日本の人口減少と裏腹の関係でしょうね。

最近は東京大学に中国人が増えているというのが知られていて、ネット上ではかなり反発があります。しかし本当に優秀な人材であるとすれば、東大の研究力向上に貢献しているという側面もあるかもしれない。そのあたりは冷静に見ないといけないなと思います。

ーー中国人の増加はピンチでもありチャンスでもある、と。

岡本:足元の動きをチャンスに変えていくような知恵が必要ですね。その前提として、中国を好きになれとは言わないですけど、ちゃんと知ってほしいということですね。グローバル時代になって、かえって日本人の視線・意識が内向きになっている。

先にも申し上げた通り、歴史を振り返れば、これまでも「倭寇」にはじまって、中国の国内状況・海外情勢の変化を受けて、多くの中国人が日本にやってくる時期があったわけです。すでに日本の大学には中国の優秀な人材がたくさんいますし、これからも多分増えてくる。

そういう人たちと私たち日本人は、どのような関係を築くべきか。日本の若い人が減ってるなかで、現状を打開する一つのカギは、中国人にあるのかもしれないという逆転の発想があっても良いと思います。



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