世界最大規模の840万人に対するコロナワクチン接種1年後の「がん」の発生リスクについての研究により判明した、増加したがんの種類
撤回されていた日本人研究者たちの2024年の論文
韓国の研究者たちによる世界最大規模のコロナワクチン後の「発がんリスク」についての研究が数日前に発表されていました。論文の要約自体は、そのときに以下の記事で翻訳しています。
・韓国の840万人を対象とした大規模研究で「COVIDワクチン接種1年後から各種がんのリスクが35〜69%高くなっていた」ことが判明
BDW 2025年9月28日
この論文について、いくつかの医学系メディアが詳しく取り上げていたので、その詳細について書いておきたいと思いました。
接種後のがんのリスクに対しての大規模な研究としては、日本人研究者たちによる 2024年4月の論文が有名です。この論文に関しては、以下で取り上げています。
・2021年から、どのようなガン死がどのように増えたのか、そして「なぜ増えたのか」についての日本人医学者による渾身の論文。そして、これからはどうなるのか
In Deep 2024年4月9日
この日本人医学者たちによる研究では、「増加したがんの種類の傾向」が、かなり明確になっていまして、たとえば、以下のグラフにあるように、いくつかのがんで「がんによる超過死亡」が増加していたことが判明しています。
2021〜2022年に超過死亡率が増加した部位別のガン
cureus.com
…って、あ。
久しぶりに見ましたら、この論文「撤回」されていました。2024年6月24日に撤回されたようです。
以下のように書かれています。
懸念の表明
編集長は、本論文の科学的信頼性に関していくつかの懸念事項を認識しています。現在、出版後の包括的な編集レビューを実施し、何らかの措置が必要かどうかを判断する予定です。
査読済みの論文だったのですけどね。
ただ、撤回されたとはいえ、今でも論文は掲載されていて、全文読むことができます。
あまり関係ない話ですが、コロナウイルスとコロナワクチン関係の論文が、その後に撤回されたのは、ずいぶんと見てきました。
スウェーデンの研究者たちが、
「スパイクタンパク質は、人間の獲得免疫の根本システムを阻害する」
という研究を発表したことがありました。この免疫の根本システムとは「 V(D)J 組換え」というもので、人間にはこのような免疫の強力な機能があるのですが、スパイクタンパク質はそれを阻害するという内容でした。
V(D)J組換なんて言葉は、私はそのときに初めて聞いたのですが、以下の荒川 央博士が note に書かれていた説明がわかりやすいです。
荒川 央「自己免疫疾患とワクチン」より抜粋
抗体の遺伝子はV、D、Jの3つの断片に分かれており、それぞれの断片ごとに多くの種類があります。これらの3つの断片が遺伝子組換えをする事により抗体遺伝子が完成します (V(D)J組換え)。
これはいわゆる人工的な遺伝子組換えではなく、脊椎動物にもともと備わっている機能です。…V、D、Jの組み合わせのバリエーションは膨大で、それだけで1億種類を超えますし、各自が百万種類以上もの抗体を持っています。これが抗体が多様である理由です。
人間はこういう免疫の機能を持っていて、「予防とかの特別なことをしなくとも、何百万という病原体に対抗できる」生物なのでした(過去形にしていますけど)。
この機能がスパイクタンパク質により止められてしまうという内容のスウェーデンの研究でした。その論文は撤回されました。理由は不明です。
2021年11月1日のこちらの In Deep の記事でこの論文を取り上げています。
他にもコロナ絡みで撤回された論文はいくつかありましたが、2024年の日本人研究者の論文も撤回されてしまっていたようです。
ともかく、その論文では、増加したがんとして、以下が挙げられていました。
2021年と 2022年の超過死亡率が高かったがん
・卵巣がん
・白血病
・前立腺がん
・口唇がん、口腔がん、咽頭がん
・すい臓がん
・乳がん
2021年頃から、各国の医療関係者たちによる「がんが増加している」という主張は数多くあったのですが、それはあくまでも、その医療従事者たちの経験の範囲での話で、全体に当てはめることは難しい面もあったことは事実です。
しかし、この日本の研究や、今回の韓国の研究は、大量の追跡データから数値を出してきているものですので、このような研究で、結果として「増えている」というのなら、それはやはり 2021年以降、全体として、がんの発生数は高くなったと言えるのだと思います。
その韓国の研究です。
韓国の研究でわかった、増加したがん
韓国の研究で示された「接種 1年後に増加したがん」の一覧は以下のようになります。さすがに、左側の文字を全部日本語にして入れ込むのは難しいですので、赤いラインにある(増加だけで減少はなかった)ものだけ入れています。
ワクチン接種1年後のがんの種類別のがんの増減
BMC
甲状腺がん、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、前立腺がんなどが、減少はなく増加だけとなっていて、がん全体も上昇しています。
しかし、減少もあるけれど、大きく増加しているがんもありますね。黒のラインが長くプラス方向に伸びているのがそうです。
唾液腺腫瘍、食道がん、外陰がん、カポジ肉腫などは減少もありますけれど、上限が大きくプラスに向いています。
それぞれの数値は、中央値を増加率の多いほうから書きますと、以下のような感じとなります。
がん全体では「 27%の増加」となっています。
接種1年後に増加した部位別のがん
・前立腺がん:69%増加
・肺がん:53%増加
・甲状腺がん:35%増加
・胃がん:34%増加
・大腸がん:28%増加
・乳がん:20%増加
などです。
また、これはブースター接種後に限るものですが、
・すい臓がん:ブースター接種後 125%増加
という大きな上昇を見せたものもあります。
ワクチンの種類は以下のようになっていて、すべてにおいて増加となっています。
ワクチンプラットフォームによる全体的ながんの増加率
BMC
数字にしますと、以下のようになります。
・cDNA ワクチン(アストラゼネカ):47%のリスク増加
・mRNA ワクチン(ファイザー、モデルナ):20%のリスク増加
・異種(混合スケジュール):34%のリスク増加
異種というのは、たとえば、最初の接種がアストラゼネカで、2回目がファイザーとか、そういうことですかね。
それにしても、アストラゼネカのワクチンのリスク増加は、mRNA ワクチンより相当高いですね。
なお、プラットフォームにも「増加したがんの種類に傾向がある」ようで、
・cDNA ワクチン:甲状腺がん、胃がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんのリスク増加に関連。
・mRNAワクチン:甲状腺がん、大腸がん、肺がん、乳がんのリスク増加に関連。
・異種:甲状腺がんおよび乳がんのリスク増加と関連。
となっています。
日本の場合は、多くの人が mRNA ワクチンの接種だったと思いますので、甲状腺がん、大腸がん、肺がん、乳がんのリスクが増加している場合もありそうです。
性別や年齢のパターンとしては、以下のように説明されています。
・男性:胃がんと肺がんのリスクが上昇
・女性:甲状腺がんおよび大腸がんのリスクが上昇
・65歳未満:甲状腺がんと乳がんの増加の兆候が強い
・75歳以上:前立腺がんのリスクが著しく高い
基本的には、高齢者と、そして「女性」が強くがん増加の影響を受けるようです。とはいえ、まったく影響を受けなかった年齢層は基本的にはありません。
この研究は、2021年から 2023年までのデータで、その後どうなっているのかは定かではないですが、先ほどの数字からは、この際に、がんの「芽」を得てしまった人は比較的多いのかもしれません。
この研究は、もともと SARS-CoV-2 (新型コロナウイルス)に発がん性があることからの仮説として、接種後のがんの増加を調査したものですが、その仮説は、ある程度正しかったことになりそうです。
なお、韓国には、少数なんでしょうけれど、かなりの情熱を持って医学者たちがコロナやコロナワクチンの研究をしてきた歴史があり、2023年には、「 4400万人」を対象に、心筋炎の調査をした医学者たちがいました(過去記事)。
また、同じ 2023年には、420万人の韓国人を対象にした接種後の有害事象についての論文も発表されています(過去記事)。
今後も、もう少し長いスパンの研究、たとえば、接種から 5年とか、そういう調査も行われていくのだと思いますが、このようながんリスクは、その後減少に転じているのか、それとも増え続けているのか、そのときになればわかるのかもしれません。
ただまあ、たとえば、2025年の時点でも、フィンランドでは以下のようなデータが示されていまして、今のところは減少に転じていないようにも思われます。
フィンランドの直腸がんの診断数の累積増加率(2018〜2025年8月)
Ilkka Rauvola
結局、これからどうなるのかは誰にもわかりません。
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