消費増税もありうる…政府が進める防衛費「倍増計画」の恐ろしい中身

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防衛

消費増税もありうる…政府が進める防衛費「倍増計画」の恐ろしい中身

防衛費をGDP2%という目標が掲げられた先にあるもの

激変する防衛政策

自民党安全保障調査会(会長・小野寺五典元防衛相)は、岸田文雄首相が今年12月に改定を目指す国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の安全保障3文書に盛り込むべき提言案をまとめた。

新たな防衛計画
防衛費倍増を狙うウラで、政府が導入を進めている「最新兵器」

 3文書のあり方について、「防衛計画の大綱」を米国と同名の「国家防衛戦略」とするべきと提言、また「中期防衛力整備計画」は防衛力強化を目的とした「防衛力整備計画」と改称するよう求めた。

 「敵基地攻撃」は「反撃能力」と名称を変えて保有を求め、ミサイル基地ばかりでなく、指揮統制機能への攻撃も含むと主張。防衛費は対GDP2%以上、つまり現行の5兆円台から10兆円台に倍増させることを要求した。

 これまで政府が堅持するとしてきた「専守防衛」を逸脱しかねず、自衛隊を「必要最小限度の実力組織」としてきた政府見解をかなぐり捨てる提言内容といえる。

 岸田政権はこの提言を3文書に反映させる可能性が高い。安倍晋三政権下で施行された海外における武力行使を可能にした安全保障関連法と相まって、自衛隊の役割は国防を踏み越え、外征軍の米軍と共同行動する「米軍の二軍化」が現実味を帯びてきた。

日本の周辺は「脅威」だらけ

 国家防衛戦略と改称するのは「脅威対抗型の防衛戦略に焦点を置いた文書」とすべきだとの理由からだが、他国の軍事力に合わせて日本の防衛力を拡大する「脅威対抗」の概念は、憲法から導き出された日本の基本戦略である「専守防衛」の対極に位置する。

 提言は「専守防衛」の項目を設け、その中で「専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢をいう」と政府見解を紹介。

 続けて「ここで言う必要最小限度の自衛力の具体的な限度は、その時々の国際情勢や科学技術等の諸条件を考慮し、決せられるものである」と主張し、専守防衛を踏み越えないための歯止めとされた「必要最小限」は延びも縮みもする脅威対抗の概念であるとの解釈を示し、事実上、これまでの専守防衛の考え方を放棄した。

 提言は脅威として順に中国、北朝鮮、ロシアを挙げ、中国について「わが国を含む地域と国際社会の安全保障上の重大な脅威」、北朝鮮は「わが国の安全保障との関連で、より重大かつ差し迫った脅威」、ロシアはウクライナ侵攻を例に「わが国を含む地域と国際社会にとって安全保障上の現実的な脅威」と日本周辺は脅威だらけだと強調。

 その上で「ミサイル技術の急速な変化・進化により迎撃は困難となってきており、迎撃のみではわが国を防衛しきれない」と主張、対処法として「弾道ミサイル攻撃を含むわが国への武力攻撃に対する反撃能力を保有し、これらの攻撃を抑止し、対処する」と提言した。

 これは地対空迎撃システム「イージス・アショア」の秋田市と山口県萩市への配備断念と引き換えに安倍晋三元首相が示した安倍談話にもとづく、「抑止力の強化」(=敵基地攻撃能力の保有)のうち、「敵基地攻撃」を「反撃能力」に改称して保有を求めたものだ。

地対艦ミサイル

 反撃という用語はソフトな印象を与えるが、実態は攻撃対象をミサイル基地だけでなく、「指揮統制機能等」にまで広げている。何が指揮統制機能かは明らかにしていないが、日本でいうところの首相官邸や防衛省が該当するとみられる。

「敵基地攻撃」の深刻な問題点

 敵基地攻撃を合憲とし、歴代内閣も引き継いできた1956年の政府見解は「他に手段がないと認められる限り」「誘導弾などの基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」(1956年2月29日衆院内閣委員会、船田中防衛庁長官が鳩山一郎首相答弁を代読)との内容で、緊急避難としてのミサイル基地攻撃を「自衛」と認めている。

 鳩山答弁には後段があり、「防御上便宜であるというだけの場合」「そういう場合に安易にその基地を攻撃するのは、自衛の範囲には入らない」と拡大解釈を厳に戒めている。

 指揮統制機能への攻撃は、まさに鳩山答弁が禁じた「防御上便宜であるというだけの場合」に該当しかねず、憲法との整合性が問われることになる。

 自民党内の議論では、今年になって北朝鮮が発射を続ける弾道ミサイルがいずれも移動式の発射機や列車から打ち出されたことから「敵基地攻撃」との表現が適さないとの指摘があった。

 その結果、ミサイル発射の命令を出す指揮統制機能が追加されたわけだが、そもそも専守防衛の枠内で武器を保有し、訓練してきた自衛隊に敵基地攻撃の発想は乏しく、どこにどのようなミサイルがあるのか知るための情報収集能力が決定的に不足している。

 現行の防衛大綱によって保有や開発が始まった敵基地攻撃に転用可能な長射程のミサイル群や護衛艦「いずも」型の空母化は、情報がなければ何の役にも立たない。その意味では、圧倒的な情報力を誇る米軍の全面的な協力がなければ使いようがなく、まさに米軍との共同作戦行動でこそ生きることになる。

 提言は「同盟能力の相乗効果を最大化し、日米同盟の抑止力・対処力の更なる強化を図っていく」とこれまで以上に日米連携の強化を求めている。

 台湾をめぐって緊張が高まる南シナ海において、米軍とともに中国に対する抑止力として、また抑止が破れた場合には対処力として自衛隊を機能させることが敵基地攻撃能力を保有する真の狙いではないのか。

 そのためには安倍政権が「爆買い」した米国製武器に対する巨額のツケ払いが始まり、防衛費を圧迫する事態の解消策として、防衛費の増加は欠かせないのだろう。

防衛費倍増の先に待つ「ジレンマ」

 自民党提言は北大西洋条約機構(NATO)が国防費を対GDP比2%以上を目標としているのを念頭に置いたうえで「5年以内に防衛力の抜本的な強化を目指す」とした。

 防衛費は10年連続して増加し、2022年度は5兆4000億円だ。GDPの2%は10兆8000億円となり、まさに倍増。ストックホルム平和研究所によると、日本の防衛費は現在第9位だが、10兆円台になれば米国、中国に次いで世界第3位に躍り出ることになる。「軍隊の不保持」を定めた憲法下で軍事大国化するのだ。

 提言は倍増する防衛費の財源を示していない。本年度当初予算107兆円の中から防衛費に5兆円を上乗せするとすれば、弾力的な運用が可能な社会保障費や教育費からの付け替えが予想される。消費税の増税もあり得るだろう。

 いずれにしても国民に重い負担を求めることになるが、果たしてわたしたちにその覚悟があるだろうか。

 「反撃能力」という実態と異なる看板を掲げ、防衛費を倍増すれば、周辺国は日本の意図を疑い、こぞって軍拡に向かうのは想像に難くない。安全になろうとしてかえって危険を呼び込む「安全保障のジレンマ」である。

 自民党は防衛大綱、中期防の改定に合わせて、毎回、提言をまとめてきた。その時点の安全保障政策を踏まえ、軍事力強化を求める内容だったが、防衛省は参考にする程度にとどめ、大綱、中期防に反映してこなかった。

 しかし、安倍政権下で国家安全保障会議が設置された後の大綱、中期防は防衛省の手を離れ、同会議の事務局である国家安全保障局が策定した。2018年に改定された大綱、中期防は自民党提言をほぼ丸飲みした内容となり、自民党防衛族を驚かせた。

 今回も同様の段取りとなれば、自民党提言が丸ごと日本の政策に置き換わる可能性は高い。憲法との整合性が問われ、限られた財源から巨額の防衛費が支出される安全保障政策とは何か、日本の国柄が根底から覆される事態を迎えようとしている。

マイコメント

防衛費「5年めどに対GDP比2%に」 という提案が先日自民党から出されたが、これも
世界情勢の変化がもたらしたものだろうと思います。

その変化がなければ防衛費は現在のままで良かったものです。

さらに提言では条件付きで武器輸出を認める「防衛装備移転三原則」を見直し、殺傷能力
のある武器を侵略を受けた外国に提供することも検討するよう求めているが、このまま
放置すると暴走する可能性があります。

もし、ここに今年予定されている憲法改正が国民投票で賛成票が多いとなればもはや日本は
軍事国家へと変貌する危険性も出てきます。

日本を取る撒く情勢はここ半年余りで大きく変化してしまい、これを抑止するのは国民の
意識次第だろうと思います。

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