鉛筆で文字が書けない、考えずに答えを選ぶ‥‥ 急速に進むデジタル学習に高まる現場と保護者の不安

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鉛筆で文字が書けない、考えずに答えを選ぶ‥‥ 急速に進むデジタル学習に高まる現場と保護者の不安

ネット情報は簡単に手に入るから楽だが思考力を奪う!

<ネット依存 コロナ禍の子どもたち③>
 子どもの学びの成果を国際的に比較する経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査。2018年分の結果が、文部科学省に衝撃を与えた。

◆OECD加盟国最下位の衝撃で急速に進む

 「授業でデジタル機器を使う時間」を尋ねた設問で、日本の子どもは「利用しない」との回答が約8割。「コンピューターを使って宿題をする頻度」も、「全くか、ほとんどない」が約8割だった。
 デジタルの学習利用状況が、加盟37カ国中で最下位だったのだ。

文部科学省は「GIGAスクール構想」を推進するが、学校現場からは不安視する声も
=東京・霞が関で

 「世界から遅れたままでいられない」と、国が打ち出したのがGIGAスクール構想。1人1台のタブレット端末を用意し、高速大容量の通信ネットワークを学校に整備する…。
 経済産業省も産業界支援の立場から、構想推進に本腰を入れている。
 コロナ禍で一斉休校が始まると、オンライン授業の実現が緊急課題となり、情報通信技術(ICT)の活用が一気に進んだ。 
 しかし、「これで良いのか」という疑問が、教育現場で出ている。
 デジタルによる急進的な教育改革を志向するさいたま市。民間企業が開発したデジタル教材が、次々に採り入れられている。

◆学校、分かるまで教えるからアプリ提供の場に‥‥

 小学校のベテラン教諭(51)は「分かるまで先生が教えてくれる場所だった学校が、アプリや動画教材を提供する場に変わってしまう」と危機感を抱く。
 今の子どもは、インターネット上の他人の文章を切り取る「コピペ」や、アプリで資料をきれいに仕上げるすべにはたけている。
 「でも、そこに自分の思考が積み重なっているように見えない。鉛筆で文字をしっかり書けない子どももおり、自ら文章や意見を紡ぎ出せないと感じる」
 別の小学校の教諭(58)によると、授業中に学習用端末でゲームや動画に興じる児童がいる。注意されると興奮して机を蹴り、いすを投げ付ける例もあった。

◆答えを選ぶだけのAIドリル 保護者「紙の方が良かった」

 不安の声は家庭からも。さいたま市の島田香織(48)=仮名=は、人工知能(AI)を搭載した「AIドリル」に不信を抱く。算数などの反復練習用ソフトで、小学4年の長男が宿題で与えられている。
 紙の算数ドリルなら、計算の経過を鉛筆で余白にメモしながら解き進む。香織が後から見れば、間違えた原因が分かった。
 だが、AIドリルは計算の経過を記すことができない。解答を選択肢から選ぶだけの問題も多い。
 香織は「長男が考えずに適当に答えを選んでいる」と懸念。「学力が付くとは思えない。紙のドリルの方が良かった」と嘆く。

◆「なぜそうなるか」突き詰める学びが本来の目的だ

 聖心女子大学教授の益川弘如ひろゆき(47)=学習科学=は「AIドリルは学びを機械に任せてしまうため、学力の低い層ほど途中で投げ出す傾向がある」と批判する。

聖心女子大の益川弘如教授=東京都港区の聖心女子大で

 「目指すべきICT教育は、紙をデジタルに置き換えることではない。子どもが主体的に調べ、多くの友達の意見と見比べる。その手段として1人1台の端末が有効であり、『なぜそうなるのか』と突き詰めて考える深い学びこそ、本来の目的だ」と指摘している。(臼井康兆、敬称略)
   

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