コオロギ養殖ベンチャー、創業3年足らずで破産。

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コオロギ養殖ベンチャー、創業3年足らずで破産。

地元経済界などから融資を集める反面“クラファン大爆死”など一般消費者の理解は広がらず?

札幌のIT企業「インディテール」が、食用コオロギの養殖事業を手掛ける子会社「クリケットファーム」等2社とともに、札幌地裁から破産手続きの開始決定を受けたことが分かった。

報道によれば、3社合計の負債総額は2億4290万円。本体の業績低迷にくわえて、クリケットファームが手がける食用コオロギの養殖事業が軌道に乗らず、昨年末に事業を停止していたという。

クラファンで“大爆死”の過去も

日本能率協会総合研究所による試算によれば、2025年度には世界全体で1,000億円規模の市場に成長する……といった話もある昆虫食。

その代表的な存在といえば食用コオロギで、ここ近年ではその可能性に着目したスタートアップ企業が次々と誕生。また大手食品メーカーなどの間でも、コオロギパウダーを用いた商品を開発・販売するところも出ているのだが、それに対しての消費者の反応は賛否が激しく分かれるといった状況。

実際、昨年2月には「Pasco」ブランドで知られる敷島製パンが、食用コオロギパウダーを使用したシリーズ商品を展開していることが取沙汰され、SNS上では不買を呼びかけるような声まであがるなど、強い拒否反応が現れたこともあった。

【関連】Pascoのコオロギパンに嫌悪の声が殺到。コオロギ養殖には手厚い補助金も?謎の市場拡大で逆に募る昆虫食への不信感

いっぽう、今回破産手続きの開始との報が入った「インディテール」だが、2009年の創業以来、スマホアプリ開発やソーシャルゲーム運営、さらにブロックチェーン開発で実績をあげていたものの、2021年にブロックチェーン以外の事業をリセットし、コオロギ養殖事業を手掛ける「クリケットファーム」を設立。拠点もそれまでの北海道から長野県に移し、同県岡谷市に工場と直売所も建てるなど、コオロギ養殖に傾倒していったようである。

そんな同社だが、とある株式投資型クラウドファンディングにおいては3,200万円もの資金を集め、また地元信用金庫と日本政策金融公庫からは4,100万円もの協調融資も受けるなど、地元経済界などを中心に期待する向きも多かった模様。

しかし、その反面で2022年には「コオロギは未来のスーパーフード!長野県伝統の食文化をアップデートして地球を救おう」といった一般向けのクラファンに打って出たものの、支援の目標金額が50万円のところを2万7,000円、支援者数は5人にとどまるという大爆死の結果に。やはり一般消費者層へのアピールといった面ではかなり苦戦していたようで、結局事業が軌道に乗らなかったというのも、単純に現状では“育てても売れない”というのが大きかったと、推測されるところだ。

ここに来て目立つ昆虫食関連企業の“退潮”

昆虫食関連企業の動向といえば、つい最近も徳島大発のベンチャー企業「グリラス」のペットフード部門「コオロギ研究所」が、閉鎖されるとの報道があったばかり。コオロギの餌となる原料の高騰、さらにコオロギの飼育自体が気候に左右され不振に陥ったことが、閉鎖理由とのことだ。

日本でも市場が拡大中との話もあった食用コオロギ業界なのだが、ここに来てその“退潮”を感じさせる報道が相次いでいることに、かねてから昆虫食に否定的だった向きからは、歓迎する声が多くあがっているようである。

そもそも、なぜコオロギをはじめとする昆虫食が世界中で注目されているのかといえば、2050年には世界の人口が100億人に達するとみられる反面で、重要な栄養素であるたんぱく質を確保することが難しくなるだろうといった、食糧危機発生の予測があるがゆえ。

そこで、鶏・豚・牛といった従来からの一般的な家畜と比べても、たんぱく質を効率よく摂取することができ、さらに飼育時の温室効果ガス排出量や、必要な水・エサの量などが圧倒的に少なく済むなど、環境への負荷が少ない昆虫食が脚光を浴びることとなっているのだ。

とはいえ日本においては、毎年大量の売れ残りによる食品ロスの問題が取沙汰される節分の「恵方巻」が、近年ではすっかり風習として定着してしまっているところからみても、迫り来る“食糧危機”を大きな問題としては意識していない向きが多いことは明らか。先述のグリラスも、ペットフードはやめるが食用昆虫事業は続けることを表明するなど、昆虫食・コオロギ食を広める動きはこれからも様々みられそうだが、そういった状況下では今後の普及も至難を極めそうというのが正直な印象だ。

コオロギ食ビジネスはすでに詰んでいる

2023年2月、「Pasco」ブランドで有名な製パン会社・敷島製パンと、徳島県小松島市内の県立小松島西高校・食物科が、一部ネット界隈で炎上騒動となった。

これらの共通点が、出した食品にパウダー状に粉砕した食用コオロギを配合していたことだ。

国際社会では、人口爆発に伴う家畜の飼料となる穀物の需要過多による世界的なタンパク質危機「グローバル・プロテイン・クライシス」対策が議論されている。

その1つとして挙がる「昆虫食」のうち、日本では農水省が旗を振る形で「食用コオロギの養殖業」が進められてきた。

これに多くの企業や研究機関が参入し、実際にコオロギ配合食品が商品や給食といった形で世に出されていく中、前述2つを皮切りに炎上が始まったのである。

この騒動を見て私が感じたことは、ネットで上がる声が「昆虫=気持ち悪い」「安全性が不安」のような、昆虫に対する拒絶がメインになっているという点である。

私もコオロギ食に大きな懐疑を抱いているのは同じだが、それは彼らのいう嫌悪感でなく、コオロギ食は此度のような騒動が起ころうと起こるまいとタンパク質危機を解決できるビジネスにはなり得ない、という観点によるものである。

昨今の騒動ではこういった意見が少なく感じられたので、当記事を認めるに至った。

ARISA THEPBANCHORNCHAI/iStock

破綻している「食糧危機対策」

昆虫食のメリットとして挙がるのが、既存の家畜(牛、豚、鶏)と比較して飼料をタンパク質に変換する効率が高く、低コストでタンパク質を生産できるという点である。

しかし畜産は飼料に限らず、飼育空間や環境の整備も重要であり、魚や虫といった小型の動物はむしろ後者を整えて多数を一度に飼育できなければ全滅に至る、というリスクが付きまとう。

 

コオロギについては本来温暖な気候で繁殖・生育する昆虫のため、コンスタントに養殖するには空調・換気による四季を問わない温度・湿度の一定管理が必須である。

また生育不良や共食いを防ぐために、ケージ毎の過密飼育にも制限がある。

つまりエネルギー・空間コストが既存の家畜より大きく、日本の優位性が低いのだ。

これではタンパク質変換効率の優等生であるブロイラーと比較して、単位面積あたりの収容密度といった生産効率面で優位性を確保できるとは考えにくい。

実際に無印良品のコオロギ配合食品をみるとだいぶ高価で、パウダーの単価でみれば魚粉の5倍程度である

タンパク質危機には魚粉をそのまま提供する方が安上がりで、普及させるにはせめて単価を現在の1/10には抑えられなければ現実味がない。

そして最も重要なのが、コオロギは「タンパク質欲」が強いことから、やはり生育不良や共食い防止のため飼料には穀物といったタンパク源が使われることには変わりなく、いざそれらが不足すればコオロギも他家畜と同様に大量生産できなくなる懸念が強い。

 

総じて、先述のタンパク質危機対策としてコオロギ養殖が有効である、という前提自体が成り立つか怪ういのである。

どうせパウダーにして摂取するなら、タンパク質優等生である大豆由来のおからや黄粉なり、20年近く前に培養技術が確立し水と肥料があれば培養できるユーグレナなりと、より高タンパク・高栄養かつ安上がりに利用できる選択肢があるだろう。

農水省による「死の接吻」

需要も怪しくなってきたコオロギビジネスが増えている背景には、昨今のSDGsブームに伴う一部世論の後押しに加え、農水省がコオロギ養殖を認定農業者制度の対象として補助金ビジネスに含めている、という2つがある。

農水省の需要を考えない「農業保護政策」に組み込まれていては、コオロギ養殖はやがて農業や畜産のように食い物にされ、喫緊の課題であるコストダウンが叶わず国際競争力を奪われるだろう。

 

これがSDGsの後押しを受けることで、補助金で生き延びるコオロギ農家が太陽光をはじめとした反社的再エネ事業のように濫立するという、いつか来た道が繰り返されかねない。

このような補助金あさりで成り立つ構造のままでは、日本のコオロギ養殖は「世界のタンパク質危機を改善する」というミッションに届くことはないだろう。

制度利用者からは「コオロギ養殖業に限定した優遇ではない」なる反論が見受けられるが、対象関係なく農水省の補助を受けているという一点で、該当ビジネスは約束された敗北の道を辿っているのだ。 

コオロギから撤退のとき

敷島製パンについては、ネット上の一部界隈で「超熟」などの看板商品を含めたネガティブキャンペーンにまで至っている。

コオロギと関係ない商品まで標的にされたのは気の毒ではあるが、この「SDGs疲れ」が騒がれる御時世に、安易に補助金ビジネスに飛びつき推し進めたことに対する高い授業料として受け止めるべきだろう。

そしてコオロギ養殖という「詰んでいる」ビジネスを推している企業や研究機関には、此度騒動を他山の石として潔く撤退を勧めたい。

→+https://www.mag2.com/p/money/1410723/2

マイコメント

国としては国民にコオロギ食を浸透させたかったようですが、ものの見事に失敗しましたね。
コオロギなんて本来人が食うものじゃない。
粉末にして形を変えたところで、それがコオロギ由来と知っただけで敬遠されます。
人の身体には昆虫食アレルギーがもともとあるということです。
それは食べてはならないという神からの啓示みたいなものでしょう。

ただ、すべてのコオロギ食業者が撤退したわけではなく、大手企業は資金力があるので何ら
かの形で市場に出てくるかもしれないので注意しましょう。

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