大量飢餓の別の要因:エルニーニョが「スーパー」を超えて「メガ」になりつつある
同様の現象が起きた1877年には飢餓により全世界で5000万人以上が死亡した
150年ぶりのメガ・エルニーニョとなった場合
今年後半に、スーパーエルニーニョが発生する可能性が非常に高いということは、日本でも報じられています(日経の記事)。
ところが、ここ数日、多くの専門家が、
「通常のスーパーエルニーニョどころではない可能性がある」
と述べ始めているのですね。
人によっては「メガ・エルニーニョ」という言葉を使っています。スーパーの上ということです。
通常のエルニーニョ現象とスーパーエルニーニョの違いは「太平洋表面の海水温度」の差なんですが、「 2℃以上高くなる」と、いわゆるスーパーエルニーニョという範疇に入るのだと認識していています。
このスーパーエルニーニョについては、物々しい名称のわりには、非常に珍しいというものでもなく、前回のスーパーエルニーニョは、ナショナルジオグラフィックによれば、 2015年から 2016年にかけて、つまり 10年前に発生しています。
しかし、今回発生しつつあるエルニーニョは、そういうものではなく、何人かの専門家によれば、
「 1877年以来の強力なエルニーニョになる可能性がある」
と述べています。
150年ぶりの強度を持つスーパーエルニーニョになる可能性が出てきたということのようです。
気象分析メディアのシビア・ウェザー・ヨーロッパは、5月7日の「 2026年のスーパーエルニーニョは記録的な強度に達する見込み」という記事の冒頭に、以下のように書いています。
シビア・ウェザー・ヨーロッパより
最新の海洋データによると、2026年のエルニーニョ現象は海面下で勢力を増しており、大規模な大気変動が始まろうとしている。ECMWF (ヨーロッパ中期予報センター)、NOAA、BOM (オーストラリア気象局)による新たなアンサンブルモデルの結果は、いずれも大きな影響を及ぼす軌道を示しており、複数の予測では、この現象が近代史上最強のエルニーニョ現象となり、1877年から 1878年にかけての記録的なエルニーニョ現象を上回る可能性が示唆されている。
地球規模の大気危機を示すこの「非常事態」シナリオは、ここ数週間で勢いを増している巨大な海洋ケルビン波によって引き起こされている。
この海底からの熱パルスは地表に上昇し、「安全弁」として機能し、熱帯地域を皮切りに地球規模の気象パターンの再編成を促すと予想される。
この後、記事は、今回のエルニーニョのメカニズムの説明に移りますが、シビア・ウェザー・ヨーロッパの記事は専門的すぎますので、冒頭をご紹介させていただきました。
それにしても、その「 1877年のエルニーニョ」はどんなもので、地球はどんな影響を受けたのか?
推定5000万人が死亡
この 1877年から 1878年までのエルニーニョでは、ワシントンポスト紙の記事の内容を簡単に書きますと、以下のような影響が出ました。
1877年に発生したスーパーエルニーニョの影響
エルニーニョによる気候変動は 150年近く前に作物を壊滅させた。同様の混乱が再び世界の食糧安全保障を脅かす可能性があるのかという疑問が生じている。
1877年から 1878年にかけて発生した史上最強のエルニーニョ現象は、インド、中国、ブラジルなどで 5000万人以上が死亡する世界的な飢饉を引き起こす状況を生み出した。
これは当時の推定世界人口の 3~ 4%に相当し、もし今日同じことが起これば少なくとも 2億5000万人に相当する。
5000万人以上が亡くなり、その多くは「餓死か、それに準じる死」だったようです。
1877年当時の世界人口は、推定で約 14億人でしたので、人口の 3%で 5000万人、4%だと 5600万人ということになります。
その後、世界の人口は著しい増加を見せて、今は 80億などになるわけで、その 3%、4%となると非常に大きな数字となります。
1800年からの世界人口の推移
ourworldindata.org
また、2018年の「気候変動と1876~78年の世界的飢饉」というタイトルの論文では、この 1877年のエルニーニョによる被害について以下のように書かれています。
これは人類史上最悪の環境災害であり、少なくとも過去 150年間で最悪の災害の一つと言えるだろう。犠牲者の数は、世界大戦や 1918年から 1919年にかけてのインフルエンザの大流行に匹敵する。journals.ametsoc.org
そして、先ほどのシビア・ウェザー・ヨーロッパは、
> … 1877年から 1878年にかけての記録的なエルニーニョ現象を上回る可能性が示唆されている。
と述べていまして、つまり、「この時以上のエルニーニョになる」可能性が出てきているようなのです。
もちろん、これらは実際に発生してみないとわからないことではあるのですが、多くの専門家たちが、「 1877年に匹敵するか、あるいはそれ以上のエルニーニョになる」という可能性を述べています。
もっとも、現代の人類は、1800年代後半とは比較にならない農業技術を持っていますので、同じような率の大量死には結びつかない可能性が高いですが、しかし……時期が悪い。
ホルムズ海峡閉鎖の影響とスーパーエルニーニョの時期が重なる
何しろ、世界中が燃料不足とナフサ不足で、食糧状況が危機に陥りつつある状況です。
ホルムズ海峡の閉鎖がさらに長引いた場合や、あるいは今すぐに閉鎖が解けたとしても、事態はしばらくは悪化する可能性が高いです(ホルムズ海峡の閉鎖が終わったとしても、正常化するには数ヶ月から数年かかるため)。
最近は、現在進行している可能性のある食糧危機について書くことが多く、前回の記事もそうでした。
・アメリカの小麦状況がさらに悪化。米農務省は「小麦作付面積は1919年以来最低となる」と発表。しかも、そこにディーゼル危機が重なった場合はどうなるのか?
In Deep 2026年5月11日
現状でも、一部の国や地域では気候や気温の状態が良好ではない上に、多くの国が「肥料の高騰と不足」に直面しています。
ホルムズ海峡の閉鎖が続いても閉鎖が解除されても、この影響は、まだ長く続いていくことになりますが、それとスーパーエルニーニョの発生が重なるわけですね。
今回のエルニーニョの影響は、2027年まで続くと予測されています。
以下は、ちょっと見づらくなりますが、過去のエルニーニョと今回のエルニーニョを比較した予想グラフです。
グラフの上部のラインの三つが予測で、ヨーロッパ中期予報センター(赤いライン)やオーストラリア気象局(ピンク)、国立環境予測センター (緑のライン)となっています。
複数の気象機関の予測
severe-weather.eu
エルニーニョのピークは今年 10月から 11月という予測ですが、その後も強いエルニーニョが継続する予測となっています。
「こんな石油不足のご時世にこんな強いエルニーニョが来るのかよ…」とは思いますけれど、重なるときは重なるものですねえ。
2027年にかけて、あるいはその後も含めて、世界がいよいよ飢餓と直面する状況となることが確実な情勢となってきています。





コメント