「現行予算では半年もたない」 高市首相の原油高対策に専門家は「こんな愚かな政策は聞いたことがない」
ガソリン価格引き下げは市上原理を無視している。
【全2回(前編/後編)の後編】
「イラン攻撃」によって起こりつつある「令和のオイルショック」という“国難”を前に、高市早苗首相(65)の顔色はさえない。もはや「体調不良」は周囲に隠せない様相を呈しているのだ。まさに“三重苦”にあえぐ高市氏は、はたして日本をどこへ導こうとしているのか。
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【写真を見る】「激ヤセ」が心配される高市首相 以前と比較すると「まるで別人」
前編では、高市首相の健康状態への不安について、周囲の声を紹介した。
当の高市氏が原油の安定供給のために打ち出した政策は、国内向けの「石油備蓄放出」と「ガソリンなどへの補助金支給」に限られる。
ホルムズ海峡が封鎖される前に通過できたタンカーの全てが日本に到着してしまう。このままイラン攻撃が長期化すれば、ガソリンをはじめ石油由来の製品が枯渇する恐れがあるため、高市首相は国と民間で合わせて約250日分ある石油備蓄の放出を16日から始めた。
また世界的な供給不安から乱高下を繰り返す原油高対策として、19日からレギュラーガソリンの小売価格を1リットルたり170円程度に下げるための補助金を投入している。
すでに都内のガソリンスタンドでは200円超えの店も散見され、家計への負担は待ったなし。高市氏の矢継ぎ早の決断を歓迎する声も聞こえてくるが、果たして効果はあるのだろうか。
「たしかに補助金を投入すれば価格は抑えられるかもしれないけど、原資はわれわれの税金ですよね。いつまで海峡封鎖が続くか分からないのに、いわば麻酔薬を打ち続けて意味があるのか」
と憤るのは、東京・足立区でガソリンスタンドを経営する「田中商事」の三枝直樹店長(43)である。
「ここ3週間くらいで1リットルあたり60円近く上がってしまっています。これは過去のオイルショックや湾岸戦争でも聞いたことがないような異常な値上がり。しかもいまウチの店はレギュラーガソリンが1リットルあたり220円なので、170円まで抑えようとすれば補助金は1リットルあたり50円かかる。しかも、ガソリン価格は今後さらに上がる可能性がありますからね。高市さんは言い出した手前、引っ込みがつかなくなっているかもしれませんが、いずれ赤字国債で補填を始めることになりかねない。ますます円安が進行してしまいます」(同)
「現行予算では半年もたない計算」
当面、補助金については片山さつき財務相(66)がガソリン暫定税率廃止前に創設された基金の残り約3000億円を活用すると発表。それが尽きれば、災害時などに活用できる予備費約8000億円を投入するとしている。
経済部デスクが言う。
「財務省の試算では、現状のガソリン価格が続けば1カ月あたり約3000億円の補助金が消えてしまいます。現行予算では半年もたない計算になりますが、すでに高市政権は補助金を絶やすことなく続けると明言してしまっています」
高市氏が胸を張る「石油備蓄放出」について、再び三枝店長に尋ねると、
「日本各地に十分行き渡るには2~3週間のタイムラグがあります。本来なら、まず十分に行き渡らせて、それから新年度となる4月上旬くらいに補助金を少しずつ出せば、混乱は少なくて済む。いまのお客さんたちは補助金投入で安くなるのを待って買い控えしているんです。明らかに来客数は減りました。安くなっても十分な量のガソリンがある店が限られてしまえば、そこにお客が集中してパニックが起きます」
市場の原理を無視
結局、割を食うのはスタンドや客だという。
「いつ中東情勢が落ち着くか分からないなら、政府は限られた原油の需要を抑制する政策を行うべき。高市さんたち政治家は、本当に国民のことを考えているんですかね。政治的なパフォーマンスでこれ以上に現場が混乱するなんてたまったもんじゃない。パフォーマーならEXILEだけで十分だよ」(三枝氏)
ちなみに、主要7カ国(G7)で、政府が末端価格を決めて補助金を出しているのは日本だけという。
「こんな愚かな政策は聞いたことがありません。とても“責任ある積極財政”とはいえず、“盲目的な積極財政”ではないでしょうか」
と指摘するのは、石油の流通システムに詳しい桃山学院大学経営学部教授・小嶌正稔(こじままさとし)氏。
「このままガソリン価格が上がり続けると、政府は何をやっているんだと批判されかねない。それを防ぐために170円まで下げておこうということでしょう。この仕組みでは、ガソリン価格が上がり続ければ、際限なく国が補助金を投入することになる。責任ある政策の前提は、必要とする金額が事前に分かっていることです。本来ガソリン価格が高騰するとドライバーの行動が抑制的になるのです。“ガソリン代がかかるから遠出を控えよう”とか“なるべく燃費を良くして走ろう”といった具合になって全体の需要が減る。そうなるとガソリン価格も自然に下がっていくのです」(同)
つまり国は市場の原理を無視して、170円という価格を決めてしまったことになるのだ。
「仮に小売価格が170円を下回る情勢になっても、皆が補助金で助かったと錯覚して、どんどん給油すれば価格は下がらない。危険がどのように収束するかも分からない状態で、この補助金の仕組みは、逆に需要を喚起してしまいます。高騰対策と同時に、需要を抑制することの必要性が分かっていない」(同)
他国からいくらか原油を融通してもらえたとしても……
もっとも懸念されるのは、いくら補助金を投入しても肝心の石油備蓄が底をつき、日常の生活はもとより日本経済の動きが止まってしまう恐れがあること。仮に他国からいくらか原油を融通してもらえたとしても、そうは問屋が卸さない。
常葉大学名誉教授の山本隆三氏が言うには、
「中東以外の国から輸入すればいいのではないかと思われるでしょうが、中国やインドネシアは国内需要が増えて輸出量が減っており、ロシアは制裁下です。また日本の製油所では『中重質油』を取り扱うことが多く、米国のシェールオイルは『軽質油』なので精製効率が落ちて大量の使用は難しい。今から製油所の設備を変えるとなれば、莫大(ばくだい)な投資と時間が必要なので簡単なことではないのです」
実際には石油不足の影響はほとんどないといわれるが、店頭では、トイレットぺーパーの買い占めを警戒する動きも出てきた。令和のオイルショックを高市氏は乗り越えることができるのか。
前編では、高市首相の健康状態への不安について、周囲の声を紹介している。
「週刊新潮」2026年3月26日号 掲載




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