「第3セクター鉄道赤字の穴埋めに3億円」「高齢化の進む地方都市でICやQRコード決済推進」…自治体による巨額浪費の実態
「責任ある積極財政」を掲げる高市早苗・首相だが、その実態は言葉とは逆だった。中東危機で国民がインフレに苦しむなか、巨額の予算が組まれた「物価高交付金」の使い途を徹底検証すると、自治体によって無責任に“流用”されていたのだ――。
物価高対策名目の臨時交付金は3年間で総額6.5兆円
高市首相は「国民が望んでいない」と物価高騰対策の国民1人2万円給付を中止し、「食品の消費税率ゼロ」を約束。経済対策では約2兆円の「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」を全国の自治体に追加した。
物価高対策名目の臨時交付金はこれまで3年間にわたって交付され、総額6.5兆円にのぼる。
本誌・週刊ポストはこの税金が全国でどう使われているのかを緊急調査した。
内閣府は交付金の使途として自治体に推奨事業を提示。生活者向けでは「低所得者・高齢者世帯支援」で電力・ガスや水道料金の負担軽減、「子育て支援」の学校給食等への支援、「消費下支え等を通じた生活者支援」はプレミアム商品券の発行など、事業者向けでは中小企業の賃上げ環境整備などのメニューを挙げる。
ところが、実際には花火大会の開催やワインサミットなどのイベントから、プロ野球観戦招待、地元鉄道の赤字補填まで物価高対策とはほど遠いとしか思えない事業にカネが注ぎ込まれていた。高市政権発足前に予算が組まれたものもあるが、実態が検証されずに現政権でも交付が続いている。
経済ジャーナリストの荻原博子氏が指摘する。
「交付金は国民への2万円給付の代わりですから、当然、食料品の値上がりに苦しむ消費者の生活を直接助ける方法で使うべき。しかし、実際の使い途を見ると、趣旨とかけ離れた流用が多すぎる」
第3セクターの鉄道の赤字穴埋め
交付金は自治体の“損失穴埋め”にも使われる。
青森市から八戸市まで全長約120キロを走る第3セクターの「青い森鉄道」。青森県は同交付金3億円をこの鉄道に投入する。料金引き下げに使われるわけではない。料金はむしろこの3月から約15%値上げされた。
同鉄道は2010年の開業以来、赤字を防ぐために県に支払う線路使用料を減免されており、3億円は全額、線路使用料に充てられるのだ。
「実質的な赤字穴埋め、県予算にとっては負担軽減でしょうね」(荻原氏)
駅前の商店主も釈然としない様子だ。
「学生の通学やお年寄りの通院の足だから支援はいいが、鉄道の経営を助けるのにどうして物価高対策のお金を使うのか」
高齢化の街でIC決済やQRコード決済導入
無駄なデジタル化としか思えない事業もある。
宮城県大崎市。駅前のロータリーから市内を循環する市民バスなど18台に4月1日からキャッシュレス機材が導入され、IC決済ができるようになった。交付金約1900万円を使ったものだ。
だが、駅前のバス停で取材するとICカードの利用者はほとんどいない。バスを待つ70代女性は「朝は通学や市役所、市民病院に通う人が利用しますが、あまりIC決済の人は見ませんね。市内循環バスは100円均一なので100円玉入れたほうが早い」と話す。
高知県土佐清水市では、交付金約1億9500万円を使って市内限定の電子通貨を全市民に配布。QRコードと氏名が書かれた1万5000円分のカードが配られ、対象の店舗でQRコードをかざすと決済ができるという。70代男性はこう言う。
「そもそも電子通貨もQRコードもよくわからず使えん。この街は高齢化が進んでいるのにこの取り組みは意味があるのか」
地元グルメを提供する店の50代店主もこう話す。
「うちは導入していない。観光客が多いから、QRコードを持ってない人ばかりだし、急に現金収入が減ったら日々の仕入れにも困るからね」
地域の実情に合っていないようだ。
交付金を支給する内閣府の見解
交付金を支給する内閣府に聞くと、「提示している推奨事業メニューのどの分野に該当するかは確認しますが、個別の事業に関しては、自治体ごとに地域の事情に応じてご判断いただくようにしています」(地方創生推進室)と答えた。
荻原氏が語る。
「国はコロナ対策以来、何度も自治体に巨額の交付金を出したから、自治体はカネの使い途に困っています。だから物価高対策にならない事業や、本来なら自治体の予算でやらなければならない防犯カメラ設置や3セクの赤字補填などに交付金を流用している。これらが物価高対策というなら、現金給付のほうが確実に国民に届くはずです」
物価高に苦しむ国民に見えないところで、巨額の浪費が続いている。関連記事では物価高対策の交付金が花火大会の開催、プロ野球観戦チケット、鉄道の赤字補填などに流用されている各自治体の“やりたい放題”の実態を、詳細なリストと共に報じている。
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※週刊ポスト2026年5月8・15日号



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