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製造業の黙示録:アメリカの原油指標である「クッシング在庫」が枯渇寸前になっている事実…。

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石油備蓄が枯渇に向かう エネルギー

製造業の黙示録:アメリカの原油指標である「クッシング在庫」が枯渇寸前になっている事実…。

そして、半導体製造に超重要な「六フッ化タングステンと硫酸の流通が崩壊している」という事実

最低限必要な在庫量が2000万バレルのところが、現在2160万バレルの「枯渇寸前」水準にまで低下

世界中で、いろいろなものの流通・在庫が非常にタイトになっているにも関わらず、何となく、世界はそれを無視するかのように回っているように見えますが、「ないものはない」という物質世界の原則があからさまになった時に、初めてパニックが起きてくるのですかね。

今回最初にご紹介するのは、アメリカの「クッシング石油在庫」というものについてですが、このクッシングというのは、辞書的には、以下のようなもので、アメリカの代表的な原油指標の受け渡し拠点となっているアメリカの地名です。

> 「クッシング備蓄」とは、アメリカの代表的な原油指標である WTI の現物受け渡し拠点となる、オクラホマ州クッシングに貯蔵されている原油の量のこと。クッシングは「世界のパイプラインの交差点」とも呼ばれ、北米の石油産業の一大中枢。 WSJ

このクッシングの「最低限必要な在庫量」は約 2,000万バレルとされているのですが、昨日の CNN の記事は、

「現在、2160万バレルにまで低下しており、枯渇寸前」

だと報じています。

その影響についての記事ですが、何しろ「枯渇の時期がもうすぐ先」に来ているということで、のんびりした話でもありません

一昨日だったか、日本政府は、首相が「 7月の原油代替調達 100%に」と表明していまして、このうちアメリカの原油がどの程度なのかはわからないですが、クッシング備蓄の枯渇と共に、石油価格は途方もなく上昇するはずの上に、アメリカは戦略備蓄も著しく減少しています。

アメリカの戦略石油備蓄の在庫増減の推移(2024年〜2026年5月)

nofia.net

アメリカの石油在庫が本格的な危機水準になった場合には、ご紹介する CNN の記事にもありますが、「輸出禁止措置」という話が出ないとも限らない。そうはならなくとも、途方もない高い石油を購入し続けなければなりません。

他にもいろいろなものの「流通の急減」が激しくなっていますが、それらは後にして、まず、その CNN の記事をご紹介します。

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オクラホマ州クッシングの貯蔵タンクは底を打っている。石油市場は転換点を迎えようとしている

The tanks in Cushing, Oklahoma, are hitting bottom. The oil market is about to hit a tipping point
CNN 2026/06/12


2026年6月9日、オクラホマ州クッシングにある原油貯蔵施設の空撮写真。

オクラホマ州クッシングは、自らを「世界のパイプラインの交差点」と称している。そのキャッチフレーズは、メインストリートとサウス・スタイルズ・ロードの角にあるパイプで作られた巨大な道路標識に大きく掲げられている。

しかし、それは単なるスローガンではない。

1912年、トム・スリック氏は現在のオクラホマ州ドラムライトを通りかかった際、石油の匂いを嗅ぎつけた。彼は 1エーカーあたり 1ドルで土地を購入し、掘削を開始。当時オクラホマ州最大の油井を発見した。

今日、近隣のクッシングはアメリカのエネルギー市場の中心地となっている。文字通り、アメリカの石油輸送の要を担っているのだ。

アメリカの指標となるウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)原油の価格決定と貯蔵が行われ、そこからパイプラインで全米各地の製油所へと送られる。

通常時はクッシングには約 4000万バレルの石油が貯蔵されており、最大貯蔵容量は 7500万バレルまで拡張可能だ。

しかし、今は平時ではない

 

クッシングで石油が枯渇しつつある理由


パイプラインの標識には「オクラホマ州クッシング – 世界のパイプラインの交差点 」と書かれている。

米国エネルギー情報局によると、クッシングの現在の在庫量は 2160万バレルだ

それは操業上のストレスレベルに非常に近い危険な状態であり、クッシングがすべての顧客からの需要を満たす石油を供給できなくなる転換点に近づいている

クッシングの備蓄量が 2000万バレルを下回ると、事実上枯渇状態となり、ほとんど使い物にならない汚泥の底を掻き出すことになる

そして、クッシングの油田が枯渇すると、石油市場に奇妙な現象が起こる。

ホルムズ海峡が近いうちに、それも非常に近いうちに開通しない限り、それがどのような事態になるのか、私たちはあと数週間で知ることになるだろう

クッシングの石油が枯渇しつつあるのは、アメリカが、通常は中東から石油や燃料を調達している世界の地域にとって、最後の頼みの綱となる供給国となったためだ。

イラン戦争中、アメリカ産石油の需要は過去最高を記録し、クッシングから流出する原油の量は、アメリカの石油掘削業者が補充する速度を上回っている。

しかし、これはクッシングだけの問題ではない。

米国のディーゼル油在庫は最近、2003年以来の最低水準に達した。ガソリン在庫も減少しており、1年前と比べて約 5%減少している。クッシング以外の米国の商業用原油貯蔵施設も急速に枯渇しており、先週だけで 720万バレルが減少したと見られる。

 

タンクが空になるとどうなるのか

それにも関わらず、アメリカの石油市場が深刻な危機に陥っているようには、まったく感じられない。

世界史上最大規模の原油供給ショックにもかかわらず、イランとの戦争が 3か月以上続く間、米国の石油・ガス価格は依然として過去最高値を更新していない

それどころか、ここ数週間は下落傾向にあり、時には急激な下落も見られる。

その大きな理由は、危機に突入する時点で世界は歴史的に石油の供給過剰状態にあったからだ。これらの備蓄は、世界的なショックアブソーバー (緩衝材)として機能した。

しかし、商業用石油在庫は急速に減少している

米国エネルギー情報局によると、世界で最も裕福な国々の石油備蓄量は 1日あたり 630万バレル減少しており、わずか 26億バレルとなっている。キャピタル・エコノミクスの気候・商品担当チーフエコノミスト、デビッド・オクスリー氏は、これは操業上のストレスレベルをわずか 1億バレル上回る水準だと述べている。

石油市場は、自動車のように最後の一滴まで使い切ることはできない。一定の閾値(操業最低ラインの在庫レベル)を下回ると、パイプラインは圧力を維持できなくなり、製油所は顧客が求めるあらゆる種類の燃料を供給できなくなる

「人間の血圧と同じように、問題は循環にあります」と、JPモルガンの商品戦略責任者であるナターシャ・カネバ氏は述べた。「石油がなくなるからシステムが機能しなくなるのではなく、循環ネットワークの稼働量が不足するから機能しなくなるのです」

このままでは、世界の石油市場は 1ヶ月以内に危険水域に突入する可能性がある。

つまり、些細な問題でも市場は容易にパニック状態に陥る可能性があるということだ。価格は日々異常なほど変動し、パイプラインの漏洩、製油所の火災、あるいは天候の変化といった些細な出来事でも、原油や天然ガスの価格が大幅に上昇する可能性がある。

 

2つの解決策があるが、どちらも良いものではない

輸出禁止措置は、クッシングの原油枯渇を防ぎ、供給システム全体の機能停止を回避するのに役立つ可能性がある。しかし、政治的な支持はほとんど得られず、長期的には価格上昇など、 潜在的に好ましくない副作用を伴う恐れがある。

もう一つの解決策は、自然な市場原理に任せることだ。しかし、それはあっという間に深刻な事態に発展する可能性がある。

クッシングが操業最低水準に近づくたびに、燃料価格は過去最高値を記録してきた。2008年、2022年、2023年…そして、おそらく数週間以内に、再びその危機的な水準に達するだろう。

「我々は今、警鐘を鳴らしているところです」と、米国石油協会(API)の CEO、マイク・ソマーズ氏は今週、CNN のフィル・マッティングリー氏が司会を務める番組「ザ・リード」で語った。「懸念すべきレベルに達しつつあります」。

エクソンモービルの上級副社長であるニール・チャップマン氏は、5月28日にニューヨークでバーンスタインが主催した会議で、「前代未聞の」在庫水準が限界点に達しつつあると述べた。「その段階に達すると、価格は急騰するだろう」と彼は述べた。

同じ会議に出席したシェブロンのマイク・ワース CEO は、在庫が極めて少ない状況が今後数週間で価格上昇につながるとの見解を示した。

国際エネルギー機関(IEA)、国際通貨基金(IMF)、世界銀行グループ、世界貿易機関(WTO)の代表者も同様の見解を示し、5月29日に発表した声明の中で、世界の石油在庫が記録的なペースで減少していることが、燃料の安全保障、市場、そしてより広範な経済にますます大きなリスクをもたらしていると指摘した。

オクスリー氏によると、原油価格は今日 90ドルを突破し、今後数ヶ月のうちに 1バレルあたり 140ドルから 160ドルまで上昇する可能性があり、海峡が完全に再開されなければ、天然ガス価格は 5ドルを超える可能性もあるという。

「さらに高い水準に達する可能性も十分にある」と彼は述べた。

最終的には、市場は供給量を増やす方法を見出す可能性がある。これは、欧州の航空会社が新たなジェット燃料供給元(米国)を見つけるための時間稼ぎとして、便数を減らし運賃を引き上げたのと同様の方法だ。

しかし、年末までに状況が解決しない場合、価格はさらに大幅に上昇し、1バレルあたり 200ドル近くまで達する必要があるだろうと、ウッド・マッケンジー社の精製・化学・石油市場責任者であるアラン・ゲルダ―氏は述べた。

そうなるとガソリン価格は 1ガロンあたり約 9ドル (約 1400円)となり、ほとんどの消費者にとってガソリンと石油の需要を事実上消滅させるのに十分な高価格になるだろう。

(※ 訳者注) 1ガロンは約 3.8リットル(米国の場合)で、いろいろな自動車がありますが、 SUV やミニバンなどでは満タンにするのに 12〜 18ガロンくらい必要らしいですので、18ガロンの車だと、一回満タンにするのに、2万5000円くらいかかるということになっていきそうです。


 

ここまでです。

最近は、他にも「流通・生産が途絶える寸前か、すでに途絶えた」ものについての報道が多くなっています。

 

半導体供給は崩壊する

わりと衝撃的だったのは、「六フッ化タングステン」というものの製造の「永久的な停止」を日本企業が、海外企業に通知したことです。

日本の2つの企業が「六フッ化タングステンの生産を永久に停止する」と海外企業に通知
NOFIA 2026年6月12日

これはホルムズ海峡の閉鎖と関係したものではなく、「中国から日本への原材料の輸入が途絶えたこと」によるものです。日本の関東電化工業とセントラル硝子の 2つの企業が、サムスン(韓国)、SKハイニックス(韓国)、TSMC(台湾)などの大手企業に、生産停止を通知したという話でした。

この「六フッ化タングステン」なんてものは、ほとんど聞くこともない物質ですが、半導体製造において非常に重要なもののようで、

> 六フッ化タングステンは、メモリチップ(DRAM、NAND)やロジックLSI(CPU、GPU)など、あらゆる高性能半導体チップの高速化と信頼性を支える上で不可欠な、まさに「隠れたヒーロー」と言えます。 tm-co.co.jp

というようなものだそうで、今後、半導体と関係するあらゆるものについて、危機的な混乱が起きる可能性があります。

これに関する主張として、ナチュラルニュースのマイク・アダムス氏は、以下のように投稿していました。この影響は、今後数年に渡ると書いています。

ほとんどの人々はこのことの重要性を理解していない。

六フッ化タングステンの供給喪失は、半導体製造にとって絶対的な壊滅的な打撃となる。現在の生産ラインのほぼ完全な崩壊で、数年間にわたる可能性がある。代替元素はあるが、製造ラインはそれらを使用する認証を受けていないため、ゼロから再認証する必要がある。

そのプロセスは少なくとも 1年はかかり、あるいは、もっと長くかかるかもしれない。

HealthRanger

日本が中国と対立したことから始まった「半導体の崩壊」ということになりそうですが、韓国は、メモリ半導体で 60%のシェアを持ち、台湾は、最先端ロジック半導体で 70%のシェアを持っています (JETRO)。容易に代替が効くというものではありません。

それが崩壊に向かう可能性があるということです。

今回の影響が具体的にどのように出てくるのかは明らかではないですが、ホルムズ海峡の問題とはまた別のものとして、大きな問題が出てきたようです。

 

硫酸がない

硫酸というものが、家電や半導体関係の製造に大変に重要なものだということは、ホルムズ海峡が封鎖された後、いろいろ調べている中で知ったのでした。硫黄は石油精製のプロセスから得られる代表的な副産物です。

以下の記事で初めてふれています。3カ月前の記事ですね。

ホルムズ海峡封鎖から発展する文明崩壊と大量飢餓のカタストロフ
In Deep 2026年3月12日

 

以下は、2021年から 2026年の 5年間の硫酸輸出量の比較です。

グラフで、ガガッと下げているのが今年 2026年ですが、通常、1,000 から 1,600キロトンくらいの間で推移していたのが、2026年6月には、輸出量が 300キロトンにまで減少していて、予測では、8月頃には実質的に「ゼロ」になると見込まれています


@tleilax___

この硫酸の供給途絶についての影響は、先ほどリンクした In Deep の記事から抜粋しますと、以下のようになります。

酸性原油/硫黄 -> 硫酸 -> 銅

銅とコバルトの抽出チェーンは硫酸に依存しており、硫酸は酸性炭化水素と製錬から回収される硫黄に大きく依存している。硫黄の供給が途絶えると、浸出作業が停滞し、電化製品の供給が急速に逼迫する。

影響の連鎖:酸性原油/硫黄 -> 硫酸 -> SX-EW (溶媒抽出・電解採取)/HPAL (高圧硫酸浸出) -> 銅/コバルト -> 電力系統と電気自動車

indeep.jp

硫酸は電気系統では以下のように用いられます。

電気系統などの製造での硫酸の主な用途

・半導体・電子部品製造:ウェハ洗浄(半導体製造において回路の不良やショートを防ぐための重要な工程)、エッチング、表面処理に多用。電子グレードの高純度硫酸が不可欠。

・電池製造:鉛蓄電池の電解液として直接使用。リチウムイオン電池などの前工程(金属抽出・精製)でも硫酸が大量に使われる。

・その他電気系統:金属メッキ、プリント基板のエッチング、電力機器部品の処理。

electramet.com

これが「全部アウトになったら」どうなるだろう…とは思います。

また、硫酸はリン酸肥料生産の主要原料でもあります。

この硫酸の流通量の崩壊は、ホルムズ海峡の封鎖が関係していますが、ここでも「中国の硫酸輸出禁止 (2026年5月から禁止)」が大きく影響しています。

なお、硫酸の原料は「硫黄(いおう)」なのですが、その国際価格がムチャクチャな水準になっています。しかし、バンクオブアメリカは「まだ上昇する可能性が高い」と述べています。

2020年〜2026年5月までの硫黄価格の推移

VOA, ZeroHedge

ともあれ、

・六フッ化タングステンの供給喪失

・硫酸の流通量の崩壊

のふたつが現実として起きています。

半導体や家電の近い将来(遠い将来なら、またいろいろな手段が発明されたり成立するのかもしれないですが)に、かなりの暗雲が近づいています。

「電気生活の崩壊」とまで言っていいかどうかはわからないですが、それに近い状態はそのうちやってくるのだとは思います。

六フッ化タングステンと硫酸のふたつの供給の問題に関しては、ホルムズ海峡が開放されたとしても、「中国の輸出の停止」が続く限りは解決しません。

私たちの世界は製造業の黙示録に少しずつ突入しています。

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