父が“1ドル100円台”の頃に加入した「1000万円の外貨建て保険」が、円安で「評価額1610万円」に
“相続税額”はいくら増えますか? 死後も税金が動くケースとは
外貨建て保険の評価は「死亡日のTTB」で決まる
外貨建て資産を相続する場合、その評価額は加入時のレートではなく、被相続人が死亡した日の為替レートで円に換算します。国税庁の規定では、このときに使用するレートは、納税者の取引金融機関が公表する「対顧客直物電信買相場(TTB)」です。
TTBとは、金融機関が顧客から外貨を買い取り、円を支払うときの相場をいい、ニュースで目にする仲値から手数料を差し引いた、少し円高寄りのレートになります。
例えば、1ドル=100円台の時期に10万ドルの死亡保険に加入していたケースで考えてみましょう。加入時の感覚では約1000万円の保障ですが、死亡日のTTBが1ドル=161円であれば、相続税評価額は10万ドル×161円=1610万円へ跳ね上がります。
この換算ルールは、円安時だけでなく、円高に転じた場合も同様に適用されます。外貨建て保険の場合、為替レートの動き次第で、相続財産としての評価額が想定より大きく増減する特性を理解しておくことが大切です。
非課税枠を差し引いた610万円が課税対象に
死亡保険金には、相続税の課税対象から外れる非課税枠があります。受取人が法定相続人である場合、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までは非課税となる仕組みです。
法定相続人が2人なら、非課税枠は500万円×2人で1000万円です。前記の例では、1ドル=100円のままなら1000万円で、非課税枠の範囲に収まっていました。しかし、1ドル=161円では評価額1610万円となり、1000万円を差し引いた610万円が課税対象として残ります。
相続税は、課税遺産総額やほかの遺産の状況によって変わります。仮に相続人2人が法定相続分で分割し、各人の取得分が1000万円以下の税率帯(10%)に収まるケースでシミュレーションしてみましょう。
この場合、円安による課税対象の増加分610万円に対して、相続税の増加額は2人合計で約61万円になります。
保険金を円に換えるタイミングでも税金が動く
税金の話は、相続税の評価だけでは終わりません。保険会社から実際に保険金が支払われる日と死亡日は、数週間から数ヶ月ずれることもあります。
その間もドル相場は動き続けているため、死亡日のTTBで評価した金額と、円に換えた時点の金額との差額が生じることがあるのです。その際の差額は、相続税ではなく受取人個人の雑所得として所得税の対象になります。
例えば、死亡日に161円だったレートが円転時に165円まで上がっていれば、その差額分の利益が雑所得に加わり、金額によっては確定申告が必要です。
相続税の申告で完了したと安心し、為替差益の申告に気づかないケースもあるため、円に換えた日のレートも記録しておくと良いでしょう。
まとめ
外貨建て保険の相続税評価額は、加入時のレートではなく死亡日のTTBで決まります。今回の例では、加入時の感覚なら非課税枠に収まっていた保険金であっても、円安の影響で610万円の課税対象が生まれました。
外貨建て保険の場合は、評価額が想定より大きくなる可能性を踏まえて、相続税の見通しを立てることが大切です。保険金を受け取ったら、円に換えた日のレートを控えたうえで、為替差益の申告漏れがないかまで確認してみてください。
出典
国税庁 No.4665 外貨(現金)の邦貨換算
国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
国税庁 No.4155 相続税の税率
国税庁 外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い
執筆者 : 竹下ひとみ
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種



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