重点措置での酒類提供停止は「特措法の委任の範囲を超え、違法の疑い」

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重点措置での酒類提供停止は「特措法の委任の範囲を超え、違法の疑い」 京大の曽我部教授が見解

 田村憲久厚生労働大臣は4月23日、インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置」で、知事が「酒類提供の停止」や「歌唱設備使用の停止」を要請・命令できるよう、告示改正を行った

居酒屋

これについて、京都大学の曽我部真裕教授(憲法学)は「居酒屋で酒類提供禁止をするというのは、事実上は営業停止であるとも言いうるため、政令・告示で定めることのできない措置を定めている疑いがある」として、違法の疑いがあるとの見解を示した。本プロジェクトの取材に応じ、コメントを寄せた(全文は後掲)。

 特措法上、緊急事態宣言では「施設使用の停止」「催物開催の中止」などの要請・命令が可能である一方、まん延防止等重点措置では「営業時間の変更(短縮)」の要請・命令ができるにとどまり、それより強い私権制限はできないことが、先の国会の法案改正審議で確認されていた。

(関連記事)まん延防止措置で「酒類提供停止」の告示改正、国会答弁と矛盾 政府「時短より制限の程度小さい」と主張

 しかし、今回、政府の国会答弁と矛盾するような告示改正が行われ、重点措置が適用された県のうち、埼玉、千葉、神奈川の3県が、酒類提供終日禁止などの要請を行った。

(関連記事)まん延防止等重点措置で「酒類提供停止」要請は首都圏3県 他の4県と対応分かれる

 今回の告示改正は、報道発表が行われず、事前に国民の意見を受け付ける手続き(パブリックコメント)も省略された。
 今後も、知事の措置権限を拡大するための政令・告示改正が、事前の予告なく行われる可能性がある。

(関連記事)緊急事態宣言解除後も居酒屋・カラオケ店の営業停止可能に 告示で知事の権限拡大 国会答弁と矛盾

曽我部真裕教授のコメント全文

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(曽我部真裕・京都大学教授)

 まず、飲食店については、被害者的側面と加害者的側面の両面があることが、その営業規制(具体的には休業から時短、各種の感染防止措置の陽性まで様々)の合理性評価を難しいものになっていると感じます。

 つまり、飲食店での飲食が感染を拡大する一因となっているとしても(加害者的側面)、その第1次的責任は陽性者である客にあり、店舗自体は場を提供しているのみで、感染をさせているわけではなく、営業規制はその意味では「とばっちり」という面があります(被害者的側面)。

 また、マクロ的観点からは、飲食店の営業規制によって感染を抑制する効果は見込めると思われるのに対し、個々の店舗への規制が具体的にどのように感染抑制に結びついているかが見えにくい点があります。

 以上のような前提はあるものの、マクロ的観点から、営業規制によって感染抑制する効果があるのであれば、一定の規制は憲法上も許されると考えます。ただし、規制の強度が上がるほど、他に代替的な規制はないのかが厳しく問われることになります。

 もう1つの論点は、具体的な営業規制は、法律(新型インフルエンザ対策特別特措法)及びその委任を受けた政令、さらにその委任を受けた厚労大臣の告示で定められるため、委任の範囲を超えているかどうか、というものです。
 酒類提供禁止に関しては、ひとまずはこの委任の範囲内かどうかということが問題となります。

 この点に関しては、まん延防止等重点措置(以下「重点措置」)でも、知事が酒類提供やカラオケ機器使用を禁止する命令を出せるよう、厚生労働省が4月23日、告示を改正していた点については、違法の疑いがあると考えます。

 すなわち、特措法31条の6は、「重点措置」として取りうるものとして、「営業時間の変更その他国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある重点区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するために必要な措置として政令で定める措置」と定めていますが、「営業時間の変更」が例示の筆頭に上がっていることなどから、それ以上の措置はとれない(政令・告示で定めることができない)ことになります。

 こうした解釈は、立法過程でも共有されていたところです(この趣旨は、衆参の附帯決議にも示されています)。

 しかし、カラオケ店でカラオケ装置を使用禁止とする、あるいは居酒屋で酒類提供禁止をするというのは、事実上は営業停止であるとも言いうるため、政令・告示で定めることのできない措置を定めている疑いがあると考えられます。
 事実上の営業停止という強力な規制であるだけに、委任の範囲は限定的に解釈しなければならないというのは、最高裁判例からも伺えるところです。

 また、このことは、現在の状況では、こうした措置によって閉店に追い込まれるおそれがある点からもそう言えます。

 他方、緊急事態において取りうる措置に関する法45条2項との関係では、事実上の営業停止であっても直ちには違法ではないと思われますが、比例原則との関係は問題になります。

 その点、今回の緊急事態宣言における戦略の全体像がどのようなもので、酒類提供禁止等といった個別の措置がその中にどう位置づけられる、どう必要なのか、説得力のある説明がなされていないことが非常に問題だと感じます。

マイコメント

最近の政府は都道府県知事の要請があれば何でも政令や告示に盛り込むように
なってきました。

政府としては自分の発案ではないのでこれ幸いとばかりに利用しているように
見えます。

完全なマッチポンプです。

コメント

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