過去「最速」のスピードで流行拡大を見せる現在のエボラウイルスの不思議な動態
そして、エボラは感染者の精液の中で1年以上生き残る
空気感染のような急速な拡大
現在アフリカで流行しているエボラウイルスについて、わりと興味深いグラフを見ました。
アフリカ全土では、1970年代以降 40回のエボラの流行が発生していますが、そのうちの比較的大きな流行を比較した以下のグラフです。
感染疑いのある症例数の推移となります。
このように、現在のコンゴ民主共和国での流行は、
「流行の拡大ペースが過去にないほど早い」
のです。
エボラウイルスの伝播の速度が遅いのは、「エボラウイルスは密接な接触でないと感染しない」ことにあるとされていて、医学的にも「エボラウイルスは空気感染しない」と定義されています。
> エボラウイルスに感染し、症状が出ている患者の体液等(血液、分泌物、吐物・排泄物)や患者の体液等に汚染された物質(注射針など)に十分な防護なしに触れた際、ウイルスが傷口や粘膜から侵入することで感染します。一般的に、症状のない患者からは感染しません。空気感染もしません。 (日本医師会)
咳やくしゃみなどで感染するような病気ではないのです。
しかし、先ほどのグラフの増え方は、やや風邪やインフルエンザ的な急速な感染拡大を示していて、過去のどんなエボラの流行とも感染速度が異なります。
先ほどのグラフを投稿していた方は、
「この伝播速度は、このウイルスの典型的なものではなく、むしろ空気感染による伝播と一致する」
とまで書いていましたが、まあ、そうであるかどうかはともかくとして、不思議な感染拡大を示しているようです。
ともかく、先ほどのグラフでは、たとえば、2018年や 2020年の流行では、「100日かけて、感染疑い例が 2倍くらいに達する」程度の非常にゆったりとした増え方ですが、今のコンゴでの増え方は、
「数日で 5倍などに達している」
ことがわかります。
5月20日時点の死者数は 139人ということで、死亡率は相変わらず高いです。
エボラウイルスは精液の中で最大約1年間生き延びる
なお、エボラウイルスは「男性の精液の中で長く生き残る」性質を持つので、時間をかけてジワジワと感染が拡大していく(流行がいつまでも終わらない)ということもありそうですが、それはあまり聞かない。
精液といえば、ハンタウイルスもそうです。精液の中で「最大 6年間も生きる」のだそうです。2023年の論文で示されたものでした。
以下に翻訳記事を載せています。
・ハンタウイルスは感染後6年間「精液中」で生存できる
NOFIA 2026年5月19日
エボラウイルスは、ハンタウイルスほどではないですが、数ヶ月から 1年くらいは精液の中で生き延びるようです。
以下は、2021年の論文からの抜粋です。
論文「シエラレオネのエボラウイルス病生存者における精液中のエボラウイルスの持続性:頻度、期間、および危険因子に関するコホート研究」より
エボラ治療ユニット退院後180日(6か月)時点で、精液中のエボラウイルス RNA 陽性率は 75.4%であった。持続期間の中央値は 204日であり、この期間後には男性の 50%が精液からエボラウイルス RNAを消失させていた。 270日時点での持続率は 26.8%、360日時点では 6.0%であった。
退院後 6カ月後くらいですと、大半の人たちの精液内でエボラウイルスは持続するようです。
1年後にまで残っているケースは 6%だけとはいえ、これが感染に結びつく可能性もないではないのではないかなあとか。1年といえば、おおむね流行期間が終わった頃ですので、そこからまた一部でぶり返すというようなことがあってもいいような気もしますけれど、まあ、そういう話は聞かないです。あるのかもしれないですが。
そんなわけで、エボラウイルスらしくない感染の急拡大に、やや興味を持った次第でした。
今の世の中には機能獲得研究などもありますし。
なお、最近、
「アメリカ国立衛生研究所のエボラ専門家が、コンゴからアメリカへ病原体を密輸した疑いで FBI の捜査対象に」
という記事を読みましたので、それをご紹介して締めさせていただこうと思います。
いろいろ物騒ですね。
NIHのエボラ専門家が、コンゴからアメリカへ病原体を密輸した疑いでFBIの捜査対象に
NIH Ebola Expert Under FBI Investigation for Smuggling Pathogens Into America From the Congo
Nicolas Hulscher, MPH 2026/05/21

病原体を米国に持ち込んだとされるヴィンセント・ムンスター博士 childrenshealthdefense.org
ヴィンセント・ミュンスター氏は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)のエボラ専門家であり、コンゴで頻繁に現地調査を行っている。また、彼は、COVID-19 の機能獲得研究の協力者でもある。
エボラ出血熱の流行直前、ミュンスター氏はコンゴから帰国した際、申告していない病原体を所持していたとして米国の空港で摘発された。
彼は NIH (アメリカ国立衛生研究所)の科学者クロード・クウェ・インダ氏と共にコンゴ民主共和国を訪れており、空港の保安検査で患者から採取された病原体サンプルが発見されたと報じられている。
彼の荷物にはサル痘ウイルスが含まれていたと伝えられている。サル痘ウイルスは、公衆衛生上の脅威となる可能性があるため、アメリカ保健福祉省(HHS)によって「特定病原体」に分類されている。
報道によると、ミュンスター氏とインダ氏は、これらの病原体を輸送したり米国に持ち込んだりするために必要な法的書類を所持していなかった。
ミュンスター氏の研究室はエボラウイルスの研究を幅広く行っており、また彼自身もコンゴで高リスクウイルスに関するフィールドワークを行っているため、エボラウイルスのサンプルも含まれていたのではないかという疑問が生じる。
彼と彼の同僚は休職処分となり、保健福祉省の職員名簿からも削除されたと報じられている。FBI が現在捜査を進めている。
ミュンスター氏はコロナウイルスの機能獲得研究にも積極的に関わっていた。彼は 2018年の DEFUSE (コロナウイルスの研究プロジェクト案)のパートナーとして名を連ねており、この提案ではコウモリコロナウイルスにフーリン切断部位を挿入することで遺伝子を改変する試みが行われた。
ここまでです。
ここに出てくる「フーリン切断部位の挿入」というのは、感染しやすくするための人為的挿入で、新型コロナウイルスにだけ見られたものでした。他のコロナウイルスには見られなかったものが、新型コロナにだけ現れたのでした。
ミュンスター氏は、サル痘も機能獲得研究でいろいろと変えようとしていたのですかねえ。




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