日本の原油・ナフサの代替調達は持続する? 安定供給を巡る2つのリスク 野村證券エコノミストが解説
今後の動向は紅海ルートの再開と米国からの輸入状況次第
米国産を中心に進む日本の原油代替調達
中東のホルムズ海峡では、原油輸送量が依然として低水準で推移しています。米国・イランの合意に向けた協議次第では船舶数が回復するシナリオが視野に入る一方、再び米国・イラン関係が悪化し、合意まで長期間を要した場合には、原油などを巡る「数量面」の供給制約が長引くリスクも排除できません。この場合、原油・ナフサといった原材料の供給が減ることで、2026年夏以降の国内経済活動を下押ししかねません。

(注)週次で表示。直近は7月25日~7月31日の1週間。
(出所)ブルームバーグより野村證券経済調査部作成
以下では、原油・ナフサ調達の現状を踏まえたうえで、代替調達の持続性を巡るリスクに焦点を当てます。
「原油及び粗油」の実質輸入(実質化・季節調整は野村證券による)は、2026年4月に2025年平均比で3割程度に落ち込みましたが、6月には同8割強まで回復しました。これをけん引したのが米国からの原油輸入です。日本の原油輸入に占める米国からの原油輸入の割合(重量ベース)は3月の約3%から、6月には約30%に急上昇しました。原油の主要な輸入元であるUAE(アラブ首長国連邦)やサウジアラビアからの原油輸入も、同期間で増えているものの、3月時点のシェアまでは回復していません。

(注)重量ベース。シェアの変化が大きかった上位・下位3か国を抽出。
(出所)財務省資料より野村證券経済調査部作成
この動きを米国側から見てみましょう。船舶データに基づくと、赤線で示している通り、米国の日本向け原油輸出は2026年5月以降、急速に増え、6月、7月と2ヶ月連続で、日本が米国にとって最大の原油輸出先となりました。米国産原油を軸に、日本が原油の代替調達を進めている様子を見て取れます。

(注)2026年7月時点の上位7か国を掲載。ブルームバーグ公表(8月4日時点)の船舶データに基づく。
(出所)ブルームバーグより野村證券経済調査部作成
6月のナフサ輸入も2025年平均比で7割程度まで持ち直す
ナフサの輸入も、2026年4月に2025年平均比で6割弱まで落ち込みましたが、6月には同7割程度まで持ち直しました。

(注)重量ベース。輸入ナフサは、HSコード:2710.12.181及び2710.12.139を対象。
(出所)財務省、経済産業省資料より野村證券経済調査部作成
これと歩調を合わせるかのように、国内のナフサ在庫指数も6月時点で2025年平均を上回りました。加えて、ナフサの場合、輸入だけでなく国内精製の増加(生産指数の上昇)も進んでいます。
代替調達のリスク(1):紅海ルートの頓挫
7月にかけて原油などの代替調達が進展した一方、その持続性には一定の疑問が残ります。ここでは2つのリスク(1. 紅海ルートの機能、2. 米国からの代替調達の持続性)を指摘します。
2026年7月20日、イエメンの親イラン武装組織フーシ派は、サウジアラビアを対象とした海上封鎖を紅海において実施すると発表しました。ただし、サウジアラビア以外の商船に対して通航料を課す計画については、8月1日に否定しました(8月2日付、日本経済新聞)。紅海のバブエルマンデブ海峡(図表「航路別に見た原油輸送量」のグレー線参照)は、ホルムズ海峡の実質封鎖が長期化する中、サウジアラビアからの原油輸出の迂回ルートとして機能してきましたが、同海上封鎖を受け、日本のサウジアラビアからの原油輸入も減少するリスクがあります。中東から日本への原油輸送にはおよそ3週間を要することから、入着ベースでの影響は9月頃から生じると見込まれます。
代替調達のリスク(2):米国からの代替調達の持続性
日本の主な原油代替調達先である米国からの原油輸入を今後も継続できるかに関しては、米国の産油量および在庫取り崩し、そしてSPR(政府戦略備蓄)の放出動向が影響すると考えられます。
特に、中長期的に足元と同量の米国からの原油輸入を継続しようとした場合(かつ、他の国々も同様の輸入量を維持すると仮定した場合)、米国の産油量が増加、少なくとも維持される必要があるでしょう。カンザスシティー連邦準備銀行のエネルギー・サーベイによると、米シェールオイルの「商業的に掘削可能な価格」は近年、WTIベースで60~65米ドル程度で推移しています。今後、原油価格が同水準を下回って推移した場合には、日本の米国からの原油輸入についても影響が生じるリスクがあります。
- 野村證券 経済調査部・市場戦略リサーチ部 エコノミスト
髙島 雄貴 - 2018年野村證券入社。2023年6月まで日本経済担当エコノミスト。コモディティー調査を担当。原油をはじめとして、天然ガス、金、非鉄金属、穀物など、幅広い商品の市況を分析し、先行きの見方を提供。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。現在、日経ヴェリタスの「コモディティー・インサイト」に定期寄稿中。
- 野村證券 経済調査部 エコノミスト
伊藤 勇輝 - 2020年早稲田大学政治経済学部卒業後、野村證券入社。経済調査部へ配属後、一貫して日本経済の分析・見通し作成に従事。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。
※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。
サウジ西部で原油の輸出再開 東西パイプライン、能力の半分まで回復
2026年9月20日
【ドバイ=浜岳彦】ブルームバーグ通信は28日、サウジアラビアが攻撃を受けて損傷した東西パイプラインを復旧させ、紅海に面した西部ヤンブー港からの原油輸出を再開したと報じた。関係者の話として伝えた。海外向けの出荷も再開したという。
パイプラインは9月10日にイラクからのドローン(無人機)攻撃でポンプ施設が損傷し、稼働を停止していた。ドローンは親イラン武装組織のものとみられる。
→https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR28AZ00Y6A920C2000000/
米国の原油輸出が急減、日本向け2割減 ガソリン高対策で在庫少なく
【ヒューストン=大平祐嗣】不透明なイラン情勢が続くなか、米国の原油輸出が急減している。6月は前月比で2割、日本向けも2割減少した。米国内の戦略石油備蓄(SPR)がガソリン高対策で43年ぶりの低水準に陥っていることが背景にある。米国産原油の輸入を増やす日本にとっても影響が及びかねない。
輸出額ベースで日本向け4割減
イラン軍事衝突でホルムズ海峡が事実上封鎖され、世界の原油輸入国は代替先として原油生…(以下、有料記事)
→https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN30CZM0Q6A730C2000000/
マイコメント
米国からの輸入が2割減ということは日本の原油輸入に占める割合が36%から30%台に
減少し、紅海ルートからの原油も従来の半分となれば、全体で2割近い減少が予想されます。
そのため、今後の状況次第では再びナフサ・原油ショックが起きる可能性があります。
最悪の場合、このまま行けば年末から来年春にかけて備蓄の大幅減少を招き、国内での
需要に応えられない可能性があります。


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